　あなたに「おじ」はいるだろうか。おじの定義とは、次の通りである。

　伯父／叔父 : 父母の兄や弟。また父母の姉妹の夫（父母の兄には「伯父」、弟には「叔父」の字を用いる）。

　おじをおじたらしめるのは、甥姪である。その男性をおじと呼ぶには、彼に甥または姪がいなくてはならない。あなたの「おじ」は、あなたがいるから「おじ」なのだ。あなたがいなければ、かれは兄または弟（あるいは配偶者）という役割にとどまる。

　したがって物語においてその人物を読者におじと認識してもらうには、お話の中で甥または姪が明示されていることが要件となろう。親子・兄弟（または婚姻）関係が前提だ（両親とも一人っ子の場合、おじは存在しない）。

　つまり「伯父／叔父コレクション」とは、甥姪のコレクションであり、親子のコレクションであり、きょうだいのコレクションといえる。物語は、家族について言及しやすい材料を与えられる。　

　そして時代や地域により慣習は異なるが、おじと甥姪は同居していないことが多い（平成２５年度国民生活基礎調査によれば日本の核家族世帯は６０.１パーセント）。したがって甥姪からみたおじとは「家族ではあるがべつの家の人」といえるだろう（もちろん異世界やべつの国を舞台とした物語も多くあるが、今回対象とした文芸同人誌は「日本語で」「直近１５年以内に」書かれたものであり、書き手・読み手とも現代日本の生活様式を踏まえている作品といえる）。拡大家族をえがくことそれ自体が、フィクション性の高いことのように思える。