三位争い(著者/高麗楼)

三位争い

著者/高麗楼


韓国ならではの大家族にほのぼの。


姪っ子が三番目に好きなのは誰?


 とってもかわいいお話です! 韓国の昔話調とのことですが、なるほど子どもに語りきかせても喜んでくれそう。女の子とその家族がにぎやかで、微笑ましく読みました。短いなかに、韓国らしいにおいや手ざわりがぎゅっと詰まっています。高麗楼さんの作品入門編にぴったりなのではと思います。

 主人公・子石の亡き姉・子玉の忘れ形見、鍾。母親似のかわいい女の子で、子石一家で面倒をみています。「鍾ちゃんの一番好きな人は誰?」家族の誰かが、毎日鍾に訊ねます。

 鍾のいちばん好きな人は母親の子玉。次は青郁さま(子玉が仕えていた宮女)。では三番目に好きなのは? と問うと、家族全員を挙げる鍾。愛らしいやりとりです。叔父の子石も鍾をとてもかわいがっており、悪い虫がつかないか心配する日々。

 韓国は大家族が一緒に暮らす文化。家族の結びつきも日本より強く、親族をとても大事にします。きょうだいやいとこ同士も、とても仲がよいそう。本作のように、叔父一家が姪の世話をしていて、家族みんなでかわいがっている、成長を見守っているというのはとても自然なことなのでしょう。

 現代の日本では、なかなか大家族で暮らすことはありません。大家族ゆえの窮屈もあるかもしれませんが、本作の昔話のような語りの中ではとても穏やかで、仲が良く素敵な間柄です。叔父や叔母、みんなで姪を見守り暮しているあたたかさを感じました。ところで韓国では日本と異なる婚姻タブーがあり、いとこどうしでは結婚できなかったり、8親等まで結婚できないなどがあるそう。家族の範囲が日本よりとても広いのですね。

 鍾がとてもかわいいです。かしこくて、おしゃま。元高官の子どもである少年に水を渡してあげるところのエピソードがとても好きです。

 姉の義姉妹・青郁さまの弟・青烟さまが、鍾の家庭教師の役割をしています。青郁さまと同じく美しい容姿で、優しいおにいさん。鍾はとても懐いています。

ひょんなことから、ふたりは婚約ということになってしまうのですが……。ここからの展開と、すっかりお嫁さん気分の鍾が微笑ましいです。さて、鍾の「三位」は誰になるのでしょう?

 本作は「桃花祝願」の関連作です。こちらは鍾の母親・子玉のお話。木槿の国の大妃殿で出会った宮女・青郁と端女の子玉。ふたりの少女時代から、成人後、大妃殿を出てそれぞれの人生を歩むまでのお話。GL純愛物語です。子玉と青郁、ふたりの住まうところは木槿(むくげ)の国。「三位争い」で鍾が木槿の花を手にするエピソードがあり、時が流れて子玉が亡くなってしまっていても、母娘のつながりがあるようでなんだか胸がじんとしました。「桃花祝願」はぐっと趣をかえて、しっとりとした物語。あわせて味わいたいです。



作者さまおじコメント/姪の鍾を溺愛する叔父さんです。

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