みちのくの君(1) 前九年合戦~安倍貞任~(著者/ひなたまり)

みちのくの君(1) 前九年合戦~安倍貞任~

著者/ひなたまり


前九年合戦のヒーロー、安倍貞任。


波乱万丈の人生を目撃したい!


 前九年合戦とは、平安時代後期の陸奥国で起こった戦いです。源頼義・義家父子が陸奥安倍一族を滅ぼし、終結します。

 現在の岩手県の中央〜県南にかけて勢力を広げていた安倍一族。

 前九年合戦の長期化の原因に阿久川事件があるといわれています。源頼義が陸奥守としての任期が終わる年、阿久利川のほとりで頼義に仕える藤原元貞の陣地が何者かに襲撃されます。この事件の犯人と疑いをかけられたのが、本作の主人公、安倍貞任です。頼義は処罰しようとしますが、貞任の父・安倍頼時(頼良)は父親として息子をかばいます。

「人倫の世にあるは皆妻子のためなり、貞任愚かなりといえども父子の愛は捨て去るべからず」

 この事件は頼義が頼時の暴発をねらった罠と考えられています。

 ……と、久しぶりに日本史の教科書を開いてみたのですが、おそらく予習は不要でしょう。webカタログの試し読みを読ませていただきましたが、一気に引き込まれました。そのまま物語の世界に飛び込んで、貞任の活躍にハラハラドキドキしたいです。

 貞任は父親とのあいだに軋轢を感じています。「クソ親父」「親父は俺が邪魔なんだ」「俺なんかいなくてもいい」——。

 貞任は生まれてすぐに母親を亡くし、金一族に預けられていました。一族の男子達と馬で駆け回り自由に過ごしていましたが、十三歳になって父のところへ戻されます。書や和歌を与えられ戸惑う貞任。激しく折檻もされます。

 ここからどのように物語が広がっていくのか楽しみです。とくに、貞任の父子関係がどのように展開されるのか気になります。

 安倍貞任は、アテルイの再来とも評された人物。色白の美貌の青年とも、ちょっとぽっちゃりしているともいわれています。数多くの伝説が残されており、波乱万丈な人生を過ごしています。

 血縁関係にある人物が多く、〝おじ〟だらけ。貞任の叔父・安倍為元は、兄のような存在でかっこよくて頼りがいのある人物とのこと。また安倍貞任の甥は藤原清衡、奥州藤原氏の初代当主。中尊寺金色堂を建立する人物です。

 

 私自身は歴史に疎いのですが、端正な語り口とイキイキした人物の語りで、とても読みやすくワクワクしております。続きがとても気になる…!

 また今回のテキレボアンソロ「山吹の姫」がとても切なく素敵。こちらは奥州藤原氏・藤原国衡と藤原基成の娘の恋のお話です。

 ひなたまりさんは奥州藤原氏・安倍氏を中心に、小説・漫画を創作されているとのこと。歴史冒険ファンタジーの世界にぜひ飛び込みたいです。



作者さまおじコメント/主役・安倍貞任にとっては、兄のような存在の叔父・吉次郎(安倍為元)。貞任より10歳年上で、もとは金一族の子ですが、安倍に養子に入りました。安倍一族の交易を一手にになう、商人としての顔を持つ男です。なお、貞任自身が「わだつみの姫」のヒロイン・那津の伯父でもあります。登場人物が血縁ばっかりなので、おじだらけともいえます。歴史ものですが、ファンタジーですし、歴史が苦手な方でも読みやすいと思います。

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