概要
最初から、三人の力関係は、歪んでいたのだ。
平民出身の母を持つ王太子、王太子の母方の従兄弟、その幼馴染みの娘。無邪気だった三人の関係は、流れゆく月日の中で静かに変質していく。身分制や社会情勢に翻弄されながら、互いに摩耗し続ける彼らの、行く末やいかに……。
近世風な世界の、鉱山の町で繰り広げられる、痛々しい悲恋の物語。
近世風な世界の、鉱山の町で繰り広げられる、痛々しい悲恋の物語。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!愛を求めるほどに、全てが指の隙間からこぼれ落ちてゆく
平民出身の母を持つ王太子ラグナと、母方の従兄弟ウルス、幼馴染の娘フェリア。生まれにかかわりなく、仲良く育った三人の間にはしかし、成長するにつれ少しずつ距離が、そしていつしか亀裂が生まれてしまいます。
身分制度など存在しなければ、或いは国の行く末など無視してしまえれば――普通の甘酸っぱい恋をして、時には喧嘩して、当たり前に泣いたり笑ったりできたはずの彼ら。しかし三人はそんなしがらみを捨てられぬが故に、けれど情など不要と割り切ることもできないがために、とある事件を皮切りに悲劇の一途を辿ってしまうのです。
愛しているから、失いたくない。手に入れたい。
胸の内にそんな血を流す慟哭を抱えた彼らが…続きを読む - ★★★ Excellent!!!少年がふたりと少女がひとり。平凡な幼馴染みの恋には、なり得なかった。
小国カラントの王太子ラグナは、平民出身ながら聡明な母を持ち、
幼少時代からしばしば、母の故郷に程近い屋敷で過ごしてきた。
その鉱山の町には従兄のウルス、幼馴染みの少女フェリアがいて、
3人は身分など関わりのない「子供の世界」で共に学び、遊んだ。
やがて17歳になる頃、ラグナたちの関係は変わろうとしていた。
そして、鉱山の事故が起こった夜を境にラグナの想いは強まり、
時を経て再び鉱山の町を訪れるや、事態は「決壊」してしまう。
また時を同じくして、南方では大国が不穏な動きを見せて──。
巧みな筆致が、王太子として世に生を受けた若者の姿を描き出す。
身分と恋と友情の間でねじれる心は、その卑怯な…続きを読む