少年がふたりと少女がひとり。平凡な幼馴染みの恋には、なり得なかった。

小国カラントの王太子ラグナは、平民出身ながら聡明な母を持ち、
幼少時代からしばしば、母の故郷に程近い屋敷で過ごしてきた。
その鉱山の町には従兄のウルス、幼馴染みの少女フェリアがいて、
3人は身分など関わりのない「子供の世界」で共に学び、遊んだ。

やがて17歳になる頃、ラグナたちの関係は変わろうとしていた。
そして、鉱山の事故が起こった夜を境にラグナの想いは強まり、
時を経て再び鉱山の町を訪れるや、事態は「決壊」してしまう。
また時を同じくして、南方では大国が不穏な動きを見せて──。

巧みな筆致が、王太子として世に生を受けた若者の姿を描き出す。
身分と恋と友情の間でねじれる心は、その卑怯な打算に至るまで、
残酷なほど克明に物語られて痛々しく、それゆえに酷く美しい。
彼は所詮、王国という名の盤上で翻弄される駒に過ぎないのか。

いずれ「陛下」と呼ばれる日。
彼が民にとって善き王たらんことを願わずにいられない。

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