第1回 霊的現象からの最強の防御法とひたすら割り箸投げるマン
奇妙な体験をした方はとかく勘違いしがちだが、怖い経験への最強の防御方法は御守りとか護符とか、ましてお祓いとかでもない。
勿論霊験あらたかな物は私も大好きなのでたくさん持ってはいるが、それは『福を呼び込む』、『不幸を避ける』物であって、変な物に絡まれるのを防いではくれない。
ならばどうすれば良いか?
よくよく心にとどめていただきたい。
『危ない場所には近寄らない』
これである。
あそこは気分が悪くなる、何か良からぬものを見てしまった。そんな場所には二度と行かない事。または足早に通り過ぎるに限るのだ。
そして、以下も大事である。
そういう物を見てしまったと感じた場合、以下の手段が有効である。
『逃げる』
とにかくその場から逃げ出す。危険な物には目を向けない。
そして、出来れば二度とその場所へは行かない事。
それが自分の家の中である場合でも一緒。
引っ越す事が出来ないなら、極力そこへ近付かない。
『無視』
私はあなたが認知できませんというつれない態度を取る事。
『何もしてやれませんよ』
いくら無視してもちょっかいをかけられる場合、「私何もしてあげられないから他を当たってください!」と突っぱねる事が大切である。
よく、鬱を患ったりした人にまずい物を見たという人が多いのは、疲弊していて幻を見たのでは無い。
『優しいから情をかけてしまった』
という可能性が高いと私は考えている。
情はかけてはいけない。
ただ、私は取り憑かれたと言う経験が無いので、取り憑かれたらどうするかはまるで分からない。
とにかく、あなたが危ないと感じる場所へは近付かない事である。
例えばあなたが男性で、交際している彼女があなたが嫌だと思う場所へ行きたがったとしよう。
「ねぇ、あたし○○明神行きたい! 絶対行きたい!」
「今日はキミとふわふわのパンケーキ食べに行こうとしたのになぁ」
と、パンケーキでうまく誘導すべきである。
あなたが女性で、彼氏があなたが嫌だと思う場所へ行きたがったとしよう。
「○○の池でボート乗ろうぜ」
「は? パンケーキ食わせろ」
と、威圧的にパンケーキを要求すべきである。そしてパンケーキ屋の長い列で時間を上手く潰して日没を迎え、ボートなんぞに乗れなくする。
パンケーキも美味しく堪能出来て一石二鳥だ。
そう、変な物を見た場所へは極力行かない事。相手をパンケーキで誘導する事である。
近くに有名店が無くても、星乃珈琲店などでも美味しいパンケーキを堪能出来る。
さて、前置きに対して本編が短くて申し訳ない。そして私はパンケーキはそんなに好きではない。
ひたすら割り箸投げるマンについては極めて情報が薄い。
朱川湊人先生の短編に「トカビの夜」という作品があるのはご存知だろうか。
思い返せば、その作品に登場する「トカビ」に似ている気がする。
小学六年生くらいの頃。
神社の夏祭り中。夕方でまだ日はそこそこ高い時間帯だった。
その神社は私が住んでいたマンションの真隣で、場所が場所だから金満で綺麗だった。
しかし困った事に、色々住み着いていた。
表題の『ひたすら割り箸投げるマン』(書いている最中の思いついた名称)は、カップルが陰に隠れてイチャつくためにあるような建物と建物の間にいた。
最初は、体調が悪くてしゃがんだ神輿の担ぎ手がいると思った。上半身裸だったからだ。
お祭りの最中なので上半身裸にふんどしというおじさんはそれなりにいたので、最初は気にならなかった。
しかしそれは、一本の使用済み割り箸をヒョイと一メートル程の距離投げては、その割り箸をしゃがんだまま飛び越えて反対側を向き、また割り箸を投げては、その反対側に飛びすさり、また割り箸を投げるを繰り返していた。
これは恐らく数キロ離れた場所にある養護学校の生徒さんかと思って放っておいたのだが、ふと顔貌が認識できない事に気付き、全力で逃走した。
もちろんびびって泣きながら。
正体は全く分からない。その後、割り箸投げるマンを見たことも無い。
ただ、小学生ながら誓った事は、それを見たあの建物と建物の間には二度と近づかないという事だ。
『怖い物見たさは身を滅ぼす』
是非覚えておいていただきたい。
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