第0.5回 (フリー素材入り)筆者が見てきたもの

 私にとってオカルト体験は、人に話せば嘘吐き呼ばわりされていじめられる面倒事だった。

 それは母も叔母も同じだったらしい。

 小学校当時は宜保愛子さんという霊能者が有名で、もしかしたら自分も有名になれるかもしれないという夢を抱いたりもしたのだが、私が見えたり見えなかったりするのは非常に波があり、これではテレビには出られないと嘆いたものだ。

 何故波があると分かったのかは、いずれ説明する。

 そもそも見るのはそれなりに怖いし、除霊なんて事も出来ないのだから、自ら心霊スポットに赴くなんて出来やしない。しかも私は、すぐ近くに霊がいたらびくりと体が跳ねるほどのビビリだ。テレビなど夢のまた夢である。

 ちなみにテレビ越しにいる・いないはまるで分からなかったので心霊番組の真贋を判定する事も出来ない。



第0.5回 アイオイさんが見てきたもの(フリー素材入り)



 私は小さい頃、父親の海外転勤で小学校二年生から六年生までアメリカで生活していた。

 日本へ帰って来た時はアメリカ人状態で、空気を読まずにズケズケ物を言ったり、日本語がむしろ不自由だったせいで、周囲から疎まれた。

 帰国子女は何人かいたが、誰もが優秀で、私のような成績普通のチビデブが居なかった事も悪い方に働いた。

 既に弄られ気味なのに、霊感持ちなどという気を惹きたがりみたいな事を話してしまえば、結果はまぁ、お察しである。それでも気を惹きたくて色々な経験を話してしまって、一時的に変な奴扱いをされてしまった。

 何故話してしまったのかは、私がふとしたことからヒーローになってしまった事に端を発する。


 山梨県のある村での修学旅行(移動教室と呼ばれていた)の際、肝試しが開催された。

 男女五人ずつがグループで指定されたコースを歩くのだが、最後の難関は、倉庫と塀の隙間を半身になって通り抜けるという場所だった。そこで私のグループより前に出発した全グループが詰まっていたのだ。

 こういう時に霊感持ちはとても楽だ。


『そこに何も居ない』


 という事が分かるからだ。

 私はその隙間を難なく通り抜け、ヒーロー扱いされてしまったのだ。


 要するに有頂天になってしまったのである。

 これが良くなかった。一人二人は私に情けをかけてくれる友人はいたが、他には気持ち悪い嘘つき呼ばわりである。

 このような経験から、私は人付き合いとはどうすれば良いのかという事をひたすら考え始める残念な奴に変わり初め、それが今のエンジニアなんていう固い職業につきながらも、拙いながらも趣味小説書きという状況に繋がっているのかもしれない。今の生活の全ては霊感が起因である可能性がある。


 ここで、私が見た『幽霊』と思われるもののタイプをまとめておく。

 思い出したら補完する次第。名称は今考えたので少々いい加減である事お詫びする。

 また、以下はフリー素材として小説の材料等に自由に使っていただいて構わない。


物理編


・気体型

すり抜けるタイプ。

自分で物を持ったりはしない。浮かんだりしているのは見たこと無し。

小説などで体を通り抜けられて「ゾクっときた!」という表現があるが、私は経験した事がない。

通り過ぎた瞬間、何かすごく濃度があるが、湿った空気に通り抜けられて気持ち悪いといった具合だった。


・物理型

普通に物に触るし、足音もさせる。割り箸程度の物を投げる事もある。他人にぶつかる事もある。私はぶつかられた事は無いが、何らかの攻撃を受けて軽いけがをしたことはある。『ポルターガイスト現象』という言葉があるが、これかもしれない。

空気を震わせられるのか、周りに聞こえる声を出すなんて事もする。


・可視型

そのままの意味。見える。あるいはかろうじて見える。


・不可視型

これもそのまま。全く見えない。


 例えば『気体型』の『不可視型』はすり抜けられた際に「うわ、なんかいる!」と認識出来る。

『物理型』の『不可視型』だと、普通にドアを開け、スタスタと足音を響かせつつ、テーブルの角にドンとぶつかったりするヤツ、羽布団に足跡を残していくヤツなんてのも遭遇した事がある。汚れを残すなどは見たことがない。



行動編


・アピール型

とにかくここいるぞアピールをする。

近づくと絡もうとする、または近寄るなと威嚇してくる。


・時間停止型

その場で何かに遭ったのか、同じ事を繰り返している。

何かをずっと探している素振りを見せたりする場合が多い。個人的経験ではこの時間停止型をよく見かける。


・不動型

何もしない。ただ座っているか立っているだけ。ただ、微妙には動いているのか停止しているようには見えない。



見た目編


・黒い人型

これが一番よく見かけてびっくりする。もしかすると『霊』ではないのかもしれない。

真っ黒な人の輪郭なのだが、目が合ったと思うとあっちから逃げ去ってしまうので、見るのは0.5秒以下くらい。


・顔ナシ型

見てくれが人間の場合、これが圧倒的に多い。顔貌が判別できない。何とも言えない形をしていたり、ただのっぺりしていたりする。典型的な白く薄いのはこればかり。


・普通型

人と見分けがつかない。別に顔色が悪いとかそんな事もない。ただ、まばたきをしないように見える場合が多く、なんとなく察する事が出来る。


 ちなみに、私はいわゆる『動物霊』だかいうものは見たことがない。全部人間っぽい何かのみだ。

 

 嬉しい事に、現時点(2017年時点)で六年間はまずい経験をしていない。大量の黒い人を震災後に見たのが最後である。

 しかし、これにはちょっと困った事もある。

 視力は2.0を保っているのだが、やはり歳を取るごとに夜目は効かなくなり始め、しかも何かが『いる』、『いない』の判別が付けられないので、真っ暗が怖くなってしまった。

 その恐怖も、今では薄れ始めている。

 ああ、これが普通なのかと、遅ればせながら、やっと気付いたのである。

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