第19回 テコ入れ回
れーかんにっきはおよそ八年ほど前まで、私や家族が度々見てしまった、危害を加えてきた色々な何かを日記にしてきた。
今回は一年を過ぎたので、なんとなく温存していた話をしたい。
アニメやドラマ等にありがちな『温泉回』や『水着回』(別名テコ入れ回)に嫌悪感を抱く方はここで回れ右をしていただければと思う。
一般的に幽霊、もしくはそれに準ずる一部の人間の目にしか見えない存在がどんな格好をしているかと言えば、黒や光っている輪郭しか見えない物以外、大体普通の人と変わらず、洋服を着ている。ただ、随分昔からよく人に質問されてきた事がある。
全裸の霊っていないの? という質問である。安心して欲しい。沢山いた。
初めて見たのは小さい頃。
当時恐らく三、四歳程だった私は母親の趣味でよく銭湯へ行っていた。当然女湯へと母と一緒に入らされたのだが、当時の私は男湯・女湯という概念をそもそも認識出来ていなかった。
というのも、『女湯』であるその場所に、おじさんが何人もいたからだ。
不聡明な私はそれを全く疑問に思ったことは無かった。おじさん達はただ女湯の中を徘徊していただけという怪しさ満点な動きをしていたのに、全く疑問に思わなかったのだ。
おぼろげな記憶の中で、私は六十過ぎくらいに見える白髪のおじさんに突然手を引かれて湯船に連れて行かれそうになった。その事を母親に話すと、母は自分でも多少見えていたのか、二度とその銭湯へは行かなくなった。
女湯おじさん達はあんな姿になっても尚、女湯を覗きたいというただれた欲求を満たしたくてたまらなかったのだろうか。まったく困った話である。
他に覚えているのは大学時代、池袋での事。
東口にあるロサ会館付近の丁字路の突き当たりにある飲み屋の前に、一糸まとわぬ毛むくじゃらのおじさんが立っていた。
季節は秋頃で、すでにコートが必要な時期だったにもかかわらず、誰もその存在に気付かず通り過ぎるので、それがおかしな存在である事はすぐに分かった。下を向いたおじさんは一切の動作をみせず、そのでっぷりした出で立ちをあます事無く夜の街へとさらけ出していたのだ。
私は見て見ぬふりをして友人と待ち合わせていた店へと入り、三時間後に外へと出たが、おじさんは微動だにする事無く、まだそこにいた。
一体どんな事情でそんな場所にそんな格好でいたのか想像も付かないが、おじさんはそこに居続けたのだ。
ちなみに女性も何度も見かけてはいるのだが、細かく描写すると大変な事になってしまうため、おじさん達だけで我慢していただきつつ、このテコ入れ回は終了とさせていただきたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます