第2回 母と叔母と鎧武者
小さい頃の母と叔母は、都内有数の高級住宅街で暮らしていた。
兵庫県の有数の高級住宅街でも暮らしていた事がある。
残っている写真を見ると、目が眩むような邸宅だった。
もちろん、お手伝いさんも何人かいたそうだ。
しかもその時に住み込んでいたお手伝いさん親子の子供は後に芸能人となり、二十年くらい前にその人の半生をテレビで取り上げていた。
何故か住み込み先の姉妹、つまり母と叔母にいじめられていたという設定で放送されていた。
実際のところは、住み込みで働くお手伝いさんは、働く時間がしっかり決められ、お手伝いさん用の住居部分は、専用の台所や浴室など至れり尽くせりで、必要以上に負担をかけないようにしていたんだそうだ。
母や叔母がお手伝いさんに何かをお願いすると、祖母が飛んできて自分でやれとどやされたんだそうだ。
そんな比較的恵まれたお手伝いさんとして働いていたその人物が、元の主を卑下する内容で語るのだから、母はご立腹かと思いきや、その放送を見てケラケラ笑い、もう二度と会う事もないし、あの子も楽しく芸能人やってるから良いのと寛容に許していた。金持ちって気持にも余裕あるんだなぁと思わざるを得ない話である。
母と叔母はよく父親(私の祖父)と近所の高級住宅街を散歩している最中、よく言い聞かされていた言葉がある。
「みんな悪い事したから大きな家に住めるんだよ」
身も蓋もない言葉だ。
祖父は大実業家の家、しかも十人以上の兄弟の間に生まれ、望む望まぬに関わらず権力闘争に巻き込まれ、色々と苦しい思いをしてきたらしい。
家族が一人一部屋持てる大きさの家を建てられた者が一番幸せであるという言葉の裏返しなのかもしれない。
母の家はよく、白い煙みたいなものに襲われたという。たくさんの人の形に見えなくもない煙が家中を駆け巡るらしい。
正体は不明だが、家業に関わる事なのはなんとなく察しがつく。
(私の祖父・曽祖父は反社会勢力ではない事だけは明言しておきたい)
その白い煙では寝不足にされる以上の被害は無かったそうだ。
お侍さんに守ってもらえていたと叔母は言っていた。
第0回で語った叔母が遭遇したという「お侍さん」は、いつも真っ黒い甲冑を着たお侍さんだったそうだ。
毎回その穴に迷い込む度に、ボソボソした声で名前を聞かれるだけだったそうだ。
恐らくそのお侍さん達はそこで時間が止まってしまっているのだろう。
しかし、どうして怖くないのかと質問すると、叔母はその人達が好きだったんだそうだ。名前を答えて、住所を言って、しばらくしたら「帰りなさい」と言われて、引き返して洞穴を出ると、こんもりした場所と穴がなくなってしまうんだそうだ。
叔母は、その人達はきっと自分を守ってくれている人達だと言っていた。
好意的解釈過ぎないかと思ってしまうが、叔母は今も元気に生活しているので、特に問題はないのだろう。
その場所はとても良いお寺だから行った方が良いと叔母が請け合うので、九体の仏様がいる都内のお寺というヒントだけ書いておく。
ちなみにだが、神社でもお寺でも、お参りするのは早朝から午後三時までくらいまでをお勧めする。
どんなお寺や神社でも、私は午後三時前に変な物を見た事がないからだ。
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