境界にたつものが取りもつ絆はいつしか、かけがえのないものを運んでくる

 ひとりの書生がむすぶ生者と死者の交わりの物語です。

 大正時代の東京を舞台に、おかしなものがみえてしまう生真面目な書生の涼太郎さんと、寄宿先のお嬢さんでお転婆な女学生の弥生さんを中心に、生者と死者、人ならざるものたちの境界上の物語が、堅実な筆致でえがかれていました。

 郷里では異端だったために人との関わりにとぼしかった涼太郎さんが、天衣無縫な弥生さんとの出会いをきっかけにかわっていく姿は、「黄泉路と梅の花の話」で見事に昇華していて心をゆさぶられます。

 奇譚、大正浪漫譚、成長譚というみっつの側面がどれもたかいレベルで実をむすんでいる物語でした。

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