君の屍をこえて

作者 裳下徹和

幾多の時代の激湍をこえて、呪われた血族が受けついできたのは、確固たる愛

  • ★★★ Excellent!!!

湿った土の香りのするホラーなのかなと読みはじめましたが、安易な予想は見事に覆されました。これは、幾世代にも渡って受けつがれる、強い愛の物語です。

現在の時間軸で進む物語から手記という形で枝分かれする過去の物語が、どれも圧巻の出来栄えで、呪われていると自らを称する陰織一族の女性と、彼女と恋に落ちて共に生きる道を選ぶ男性のふたりの人生が、受け継がれる命と呪いが、避けられない死が、それぞれの時代の激動の中、圧倒的なスケールを伴って、輝かしくも切なく胸に迫ります。一番最初の明治時代の物語のクライマックスに差しかかったところで、読む手を止められなくなりました。
そして、それまでの物語で複雑に張り巡らされた人間関係が、解き明かされてきた幾つもの真実が、陰織一族の女性を救うための手立てが、一気に集約されて走りだす現在の物語がまた素晴らしいです。二転三転する数々のドラマティックな展開のあとに訪れる、重厚な、けれども静かで穏やかなエンディングに辿りついたとき、時積さんの傍で、夜空に輝く彗星を見あげているような気持ちになりました。

ホラーが好きな方、アクションが好きな方、歴史が好きな方、恋愛ものが好きな方、この圧倒的な読後感を是非味わってくださいませ。忘れられない物語になるはずです。

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