それぞれの方法で妻を、娘を救おうとした男たちの明治~平成史。

至嶋時積の恋人・香沙音が、陽性の妊娠検査薬を残して失踪した。
彼女は、遺伝する病を背負っているらしいのだ。

時積と香沙音は現代の人物ですが。
彼女が存在するということは、血と病を継いできた一族がいるわけで。
文献としては明治、口伝では江戸時代にまで、起源を遡ることができる。
それぞれの時代で男たちは、陰織一族の女性と出逢い。
いずれ必ず発病して死ぬ、とわかっていても彼女を愛し。
妻を、生まれてきた我が子を、それぞれの方法で救おうとする。
そして果たせず、先立たれ続けていく。

私、下山事件や帝銀事件などの、戦後すぐの謎に関心がありまして。
背景を知るために、戦時中を扱った本にも手を伸ばすんですね。
満鉄とか731部隊とか里見甫とか。
という人間からすると、大正で既に「おお、あの人出た!」と思い。
昭和初期なんて、面白くて面白くてたまらないわけです。

……と思ってたら、昭和中期はもっと面白かった!
文献や家紋や絵画から、史学的に一族の出身地の謎を解こうとするのが。
発掘もするし。
もう、ものすごく歴史ミステリで超楽しい!

何が凄いって。
これだけいろいろな時代、広範囲の事件を扱っているのに。
作者様が書いてる内容に全部、説得力があるってことです。
読んだ方それぞれに、「ここが面白い」って箇所が絶対あると思います。

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