大正期、東京。自分とは何であるのかを、誰もが探している。

大学で学ぶために上京してきた境涼太郎には、他人に見えぬものを見る目があった。
涼太郎の周囲で、人と、人ならぬものが行き来し共存する、優しい物語。

「学友と勿忘草の話」で、この作品における基本的な世界の捉え方は、涼太郎の口から語られていますが。
それを一番実感したのは、「奥村の恋と金木犀の話」に出てきた「俺と全く同じじゃ無いかよ」という台詞。
人と、そうでないものとの間に、大した違いなどないのです。

周囲の人々の心を明るくしてくれる、弥生お嬢さん。
凛として気高く、うちに刃も持つ、登美子嬢。
デパートガールの女性も、皆、自分とは何であるかを探している。

郷里では、その目ゆえに居場所のなかった涼太郎が、東京でお嬢さんや他の人々と触れ合い、自分を肯定していく過程には、胸にぐっとくるものがあります。

これから先の物語も、とても楽しみです。

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