暖かくて、切なくて、少しちくりとする

“幽霊”というものの魅力を余さず捉えた作品であるように思います。
そしてそれは取りも直さず、生きているひとの物語でもあるということです。死んでいても生きていても、ひとには各々かつて関わった相手がおり、心に患う事柄がある。そういう人間(及び人間以外)を描いたこの作品は、ある時は結ばれた縁の美しさを、ある時は浮世のままならなさを、情緒あふれる筆致に乗せて読者の胸に送り出してくれます。
逍遥するものたちに寄り添って進む、優しくも一筋縄ではいかない魅力に満ちたお話でした。この先に記される出来事もとても楽しみです。

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