寒空の下、狩人に寄る辺はあるか

戦いの日々に先は見えず、帰る所も覚束ない。
廃墟と化した凍てつく大地の情景は、主人公らワイルドハントが置かれた立場に重なって見えます。
人類の盾となって戦う身でありながら、社会においてはむしろ居場所がなく、怪物との殺し合いは命と精神を磨り減らす。
……読者としては、だからこそ彼らから目が離せず、未だ描かれていない未来に想像を巡らせては希望と不安を抱く楽しみが持てるのですが。

主となる登場人物たちの魅力も、その感情をより大きなものにします。
いわゆる「良い子」ではないけれど、どこか放っておけない人間味と危うさを持った若者たち。
彼らが見せる世界への向き合い方は、無意味に意地を張っているようでありながら、しかし同時にどうしようもなく尊い。
そういった機微がするりと伝わる、細かなところまで神経の行き届いた描写もまた、読んでいて感じ入ったところでした。

願わくばこの先の道行きにおいて、彼らが多くの暖かいものに触れられることを。

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