概要
大手グループ企業を傘下に置くホールディングカンパニーの社長をしている御堂圭吾。
しかし、圭吾が当主を勤める御堂家には、代々当主が生贄になるという古い風習があった。
「でもな。ちょっと抗ってみようかなと、思うねん」
裏社会に生きる友人イザを巻き込んで、アウトローな中年男二人が挑む古き神と呪いの民俗譚。
一章完結のため、どこの章からでも読んでも大丈夫です。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!この世に明確な悪っているんかなぁ……ってそう思った
この作品、本当にフィクションなのだろうか。
作者さんの圧倒的な知識量、その現実から延長した世界の物語が展開されている。設定に説得力や現実味を持たせるために後からつけたってより、現実から派生していったという感じ。
裏社会という、私たちの日常とはかけ離れた世界だというのにリアリティーを感じた。
私たちの知らない世界、知ろうとしていなかった世界。テロリストや密売人など、彼らを悪い奴らだと単純に考えていたが、彼らにもそれまでの人生があって、価値観があって、何より人間で。やっていることは肯定しないが、彼らを手放しに悪と言っていいのだろうかなぁ、と。表の社会から裏が少し見えるように、描かれた裏の社会…続きを読む - ★★★ Excellent!!!オカルトと裏社会、ふたつの影の絶妙な融合
裏社会に生きる銃器のブローカー&ディーラー・イザと、呪われた家系に生まれた大会社のCEO・御堂圭吾が、人ならざる者たちに立ち向かう…もとい鎮めたり宥めたりする連作物語です。
ホラー的な要素も多分に含みつつ、人ならざる者たちがただ怖いだけでなく、非常に人間臭く描かれているところが魅力です。
さらに、豊富な裏社会や銃の知識が、舞台設定やアクションシーンを説得力のあるものにしています。
アクションシーンは、血飛沫が上がる様子やその場の匂いまで伝わってくるようで、真に迫っていて格好いいです。
こういった点が、作者さんの個性が強烈に光っているところだと思います。
主要なキャラクターたちは決して軽く…続きを読む - ★★★ Excellent!!!目に見えなくても、そこにいる。悲しくて優しい何かが、誰かが。
片や難民キャンプ生まれの闇の商人、銃のスペシャリスト。
片や一流企業の社長にして由緒ある家柄の家長、剣術の達人。
2人のおじさんが怪異を相手取って渡り合う。
民俗学風味のハードボイルド・ファンタジー、とでも言おうか。
人生の酸いも甘いも噛み分けた、と表現するには、
おじさんたちは怖がりだったり子どもっぽい顔をしたりする。
こちらを殺しに掛かってくる人間の敵には容赦がない一方で、
此岸に絡め取られた哀れなモノたちに対してはとても優しい。
人々に忘れ去られた寂しがり屋の神さま。
子孫を思う余り、呪いを重ねる人形たち。
姿の在り方が人間と違い、人間よりも純粋な心を持ち、
それゆえ恐れられる彼ら…続きを読む - ★★★ Excellent!!!裏社会と怪異。リアルな筆致で綴られる二つの非日常
非日常と非日常が交わる話。この作品を一言でまとめるならば、そういう表現になるでしょう。
いわゆる怪異ものにおいて最も強くその恐怖を演出するのは「落差」であり、ゆえに平穏な日常の中に怪異を潜ませるパターンが多いのですが、本作はその手法を取れません。主人公の中年男性二人は若い頃から裏社会に慣れ親しんで来た人間であり、自分も彼らと似たような人生を歩んでいるという読み手はほぼ間違いなくいないでしょう(というか、いたら逮捕)。よって怪異の演出に日常と非日常の落差を使えず、下手するとどっちつかずで終わってしまう非常に難しい舞台設定なのですが、作者様はそこを確かな知識と描写力でクリアしています。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!リアリティとファンタジーの華麗なる結婚……!
現時点での最新話に当たる「ロシアの地にて 雑記」までの感想となります。
まずはその並々ならぬ知識に裏打ちされたリアリティある描写に圧倒されました。主要キャラ二人が共に四十代というやや高めの年齢設定も珍しく、これが〈大人の物語〉であることを再認識させられます。
もう一つの特長たる伝奇的要素もまた物語上の単なるスパイスに留まらず、ジャンル編成により新設された現代ファンタジーと呼ぶに相応しい
ものです。浅瀬でバチャバチャ戯れるようなライトなファンタジーも少なくない中、こちらは細部まで作り込まれた設定にどっぷり浸かれます。真実味が違うのです。
リアリティとファンタジーの華麗なる結婚。安易なミクスチャ…続きを読む