第31話 SMPC

 Sexualセクシャル Minorityマイノリティ Psychicサイキック Clubクラブ

 というらしい。


 調べたわけではない…そう名乗る白髪の紳士が現れたのだ。

「知りたければ、ここへ行くといい…」

 病院から出ると、向こうから話しかけてきたのだ。

「彼の能力のことも含めて、すべてを話そう…」


 そんなわけで、5人揃って指定された会員制Barの入口に立っている。

 黒いドアには呼び鈴は無く、カードを差し込むタイプのドアだ。

 紳士から受け取ったカードを差し込むと、ドアが開く。

 ジャズバーのような室内、暗めの部屋に紫の照明が室内をボンヤリと照らす。

「待っていたよ…」

 あの時の紳士がピアノの前に座っていた。

「いつからあのポーズで居たのかしら…」

 乱子が呆れたように呟く。

「それは言ってやるなよ、毎日ソワソワしながら待ってたんだぜ…」

 迦楼人かるとが察しろと云わんばかりに乱子を諌める。

「きっと…帰りたくても、帰れなかった日々が続いたのでしょうね~お察しいたします」

 蝶代ちよが深々と頭を下げる。


 なんだろう…他人の神経を逆なでさせたらこのトリオの右には、なかなかでれない。


「ゴホンッ!」と咳払いで空気を変えようと紳士が立ち上がる。


「キミ達の能力は拝見しましたよ…」

「瞬間移動・念動力・透明化・幽体離脱・治癒…実に素晴らしい」

 褒められたと思ってるのか、シズシズが照れて「いやー」って感じで頭を掻く、そして乱子にスパーンと後頭部を叩かれ。

「ごちそう様です」

 乱子に深々と頭を下げる。

 相変わらず躾は完璧だ。


「話を続けていいかね…」

 紳士が若干苛立っている。


 まぁ…白髪の紳士が言う事にゃー…お嬢さんお逃げなさい♪の真逆…でした。


 僕達の能力は発動条件が厳しい、性的な興奮が得られないと発動しない。

 そのうえ、能力は汎用的だが効果範囲が限定的。


 言われてみれば、その通りなのだ。

 よく調べてる。

 スカートの中からスカートの中へ瞬間移動する僕の能力などズバリだ。


「だが、我々の能力は範囲が狭く、効果は限定的…」

 それは性的嗜好の差だと紳士は言う。

 つまり…ここは同性愛者や幼児愛など、一般的とは言えない思考を持つ能力者の組織だということだ。


「我々はキミ達ほどの強い力は無いが…発動条件にリスクはない」

(発動条件が無い…マズイ!)

 下腹部に痛みが走る。

 皆、股間を押さえて身動きが取れない。

「何をした?」

「クククク…私の能力は密室内で陰毛を硬質化する能力者だ」

 絶句…陰毛の硬質化…なんて恐ろしい能力だ。

 蝶代ちよの表情が、その恐ろしさを物語っている…。

(毛深いのか…)

「動けまい…キミ達の陰部周辺は自らの陰毛でズタズタだろう…」

 皆、冷や汗を垂らしながら、微動だに出来ない。

 絶対絶命。

「ハハハーハッハハハーッ、動けまい…我々の仲間になれ」

「仲間だと?」

「そうだ…思う存分、性の赴くままに生きられる、そんな街づくりに手を貸すのだ」

「選挙の公約か?バカ野郎」

 迦楼人かるとが紳士に飛び蹴りをくらわせる。

「なんだ?なぜ動けるんだキサマ!」

 鼻血を出しながら不思議そうに迦楼人かるとを見つめる紳士。

「ジジイに見つめられる趣味はねぇ!」

 容赦なくゲシゲシと蹴り続ける迦楼人かると

「やめろ…迦楼人かるとジジイは、すでに気を失っている…」

 能力が解除されたのだ。

 乱子が自分のパンティの中を覗き込んで首を横に振る…。

 僕のトランクスも血が滲んでいた。


 なぜ迦楼人かるとだけが動けたのだろう…。

「俺は…俺は…パイパンだ…」


 なるほど…無毛症。

 天敵という奴だ…。


 恐ろしい奴らがこの街を狙っている。

 こんな恐ろしい能力を持っている奴らが、まだ居るということ…。

 気は抜けない。

 ハマれば瞬殺必死の集団なのだ…。

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