第14話 神聖なるフェードイン(前)

 夏祭り…少し寂しくなります。

 桜木さくらぎ 雪夜ゆきやです。


 夏の終わりを感じます…花火を見てると涙が出そう。

 宿題まったくやってない……。


 気にするな俺…プレッシャーに負けないで!

 今日は夏祭り。

 薄着に…浴衣に…下着が透ける日だよ。


 夏祭り。

 屋台も楽しいが、屋台にはしゃぐ女の子が好き。

 フラッペを食べながら歩く浴衣…うっすら透けるPライン、白に浮かび上がるパンティの柄。

 金魚すくいでしゃがむミニスカート…反対側に立つと視えるパンティ。

 たこ焼きを座って食べる薄いTシャツ…もはやデザインと化した透け浮かぶブラジャー。


 すれ違うたびに鼻をくすぐる女子の匂い。


「桃源郷出現!」

 叫びたくなる。


 が…祭りに来た目的はソレじゃない。

 僕は、お面屋の前で、お面を吟味している真っ最中だ。

 祭りのメインは『お面屋さん』なのだ。


 お面屋さんで、アレコレと考えていると、神社の向こうで火柱がたつ。

(新しい催しだろうか?去年、あんな行事あったっけ?)

 どうも様子がおかしい。


 一応、お面を購入しておこう。


 火柱のほうへ走ると、やはりイベントじゃない。


 提灯が燃え出して、周囲に飛び火しているのだ。

 有体に言えば火事だ。


 火は円形に燃えている、その中心に巫女さんと包丁を振り回し喚く男。

(ニュースレベルじゃん!)


 騒ぎに気付いて、人が集まってきた、「救急車だ、消防車だ、ポリスだ」と騒ぐだけで統率が執れてない。

「仕方ない…変身!」

 境内でたこ焼きを食べている黒ギャルにLock On!

「お面マスク?タコ焼き食べる?」

「お面マスクではない…アングルメーターだ!」

「お面マスク…お面外さないと食えネェし…ウケる」

(お面マスクって…お面仮面みたいな…なんで2度言うねん!的な…)

「問答無用!緊急事態だ」

 僕は、黒ギャルの足を持って、思いっきり左右に広げる。

「ちょっ!まっ!えっ?」

 浴衣がズレて健康的なというか、人工的な褐色の太ももが露わになる。

 その奥にチラリと見える紐…白い紐のパンティ…極端に布面積の少ないTバック。

「その心意気申し分なし!いざ!フェードイン!」

「とりま!待って…なに?フェーロ?え?舐めろ的な!嫌ですけど…」

 慌てふためく黒ギャルの太ももに顔を埋め、浴衣の裾を掴み、ファサッと戻す。

「配慮?人目を配慮?…優しいの?」

 幾分、落ち着いたのか……。

 まぁいい……。


 1度目を閉じ、深く深呼吸する。

 黒ギャルのキツイ香水が身体を満たしていく…。

(はぁ~いいよ…アグレッシブなデザイン…だけど…純白。キミのようだよ。見た目の派手さに目を奪われるけど、本当は白いまま…素敵だよ…キミの…本当のキミは、この白く薄い刺繍の奥に見え隠れしてるよ…あぁ隠し切れないよ…キミの…本当のキミを見せておくれよ)

「コンプリート!」


「袴の裾からレボリューション!」

「せまっ!あつっ!」

「えぇ~…」

「大丈夫ですよ…助けに来ました…だからちょっと、手を貸してもらえますか?袴に挟まったというかなんか逆さまだし、エビぞってるし…助けますから、まず僕を助けてください」

「えぇ~…」


 とりあえず抜け出して。

「アングルメーター!」

 決めポーズ。

「熱い…やばい…」


 僕は、包丁男を牽制するように構える。

 毎日、鏡の前で研究した構えだ。

(どうだ!只者じゃ無い感半端ないだろ!)

「うるせぇ!変態!」

「変態?」

 思わず後ろを振り返った…巫女さん?まさか変態なのか?それはそれでなんかA.Eフィールドを発動させるな~。

「てめぇだよ!お面馬鹿!」

「お面バカじゃない!アングルメーターだ」

「お前…死ね」

 男が包丁を振りかざす。

「離れて!」

 僕は巫女さんの前に立ちふさがる。

 男が包丁を振り下ろす…と思ったので、脳内でアホほど修行したとおりに手をクロスさせて受け止め…られなかった……。

 お面をかすった。

(アレ…)

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