第10話 透ける月夜

 HEY!YO!桜木さくらぎ 雪夜ゆきやだYO!


 帰宅途中河原をブラブラと歩く。

『痴漢に注意』

 真新しい看板が立てられている。

(痴漢…………まさか!シズシズか?ほっとけないな……シズシズの念動力は僕の瞬間移動と質が違う…物理的に作用する恐ろしい能力だ、ほっとけない……)


 その夜から、僕は河原をパトロールすることにした。

 毎日というわけにはいかないが。


 何度目かの夜……正面からロングヘアーの女性がひとり歩いてくる。

 こういうのもなんだが…恰好のエサだ。


 僕はすれ違い様にチラリと女性を横目で確認した。

 切れ長の目と視線がぶつかる。

「フフフ…」

 意味ありげに女性は笑った。


 僕が足を止めると

「ねぇ…アタシ綺麗?」

「…………」

「よく見て……アタシを見て……見たいでしょ…ねぇ…キャストオフ!」

 ロングヘアを両手でフワサッとかきあげ、身体を淫靡にくねらせながら、服を脱ぎ始める。

 ブラウスを脱ぎ捨てると、紫のシースルーのブラジャー。

 白い肌に月明かりを浴び、紫のブラジャー越しにバストトップが透けている。

「まだよ……もっと……アタシを見つめて……彼女はタイトスカートをスルッと地面に落とす。

 ブラとセットの紫のシースルーショーツ、その奥は薄いヘアーが見える。

「さぁ……もっと見るのよ……近くでみたいでしょ……」

 美しい彼女に魅入られるように、紫のショーツの前でひざまずく。

 鼻先にショーツが触れそうだ……手を伸ばせば、形の良い胸に触れることができる。

 僕は……僕のA.Eフィールドは……とっくに全開です。

 香水の香りに混ざり、彼女自身の香りが鼻をくすぐる。


「あぁ……見てるわ……アタシのソコを見てる……いいわ……もっと見せてあげる…アタシの奥を……見て…ねぇ見たいでしょ…ペ…ペ…」

(ペ?……まさか僕を求めているのか……)

「ペ…ペルソナ!」

(なに?ペルソナ?…えっ、悪魔召喚?)

「いいわ、視て、アタシの奥を見て、視える?ねぇ見える?キレイでしょねぇ!」

(何も視えない…んだが……消えた?)

 紫のショーツ越しには……黄色いお月様。

 僕は悟った。

(あぁ……こういう能力……てか痴漢って、この人だ…露出狂だ)


 僕の目の前には紫のショーツだけが揺れ動いている。

 きっと、自分で…。

 クチュクチュという音と、淫靡な香りで解る。

「ん…あぁ…いいぃ…あぁ…クッ!~うっ…うぁ…ぁぁああ……」

 果てたようだ……。


 ショーツが離れていく……ゆっくりと白い肌がジワリジワリと闇に浮かび上がる。

 落ちている服を拾い、着ているようだ。


「良かったわ…とても……じゃあね…」

 何事も無かったかのように立ち去る彼女。


 きっと…性的興奮で透明化する能力……とかだ。

視られることで能力が発動するが、その能力が透明化って…誰にも視えねェ。

変態の複雑な心理が産み出した矛盾した能力。

(この街は、こんなヤツばっかなのか……)

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