第11話 俺の時間だぜ

 暑中お見舞い申し上げます

 平素は格別のご愛顧を賜わり厚くお礼申し上げます

 さて 私 勝手ながら下記期間中を夏期休暇とさせていただきます

 ご迷惑をおかけしますが 何卒よろしくご了承のほどお願い申しあげます。


 桜木さくらぎ 雪夜ゆきや


 正直、悩んでます。凹んでます。

 念動力・透明化……ハイスペックな能力者を立て続けに目の当りにして。

 それに引き替え、僕の能力は…スカートの中から中への限定的な瞬間移動。

(蝶々か!てふてふか!)

 発動条件は絶対に一緒だと思う。

 念動力にしても、透明化にしても即、凶悪犯罪と結びつくような強力な能力だ。

 原動力が性衝動のせいだろう…性犯罪にしか結びついていないことは幸運というか残念というか……うん…まぁ被害者もいるから、喜んではいけない。


(僕の能力は……)

 そんなわけで、新たな能力獲得のため修行編開始。

 ヒントは感じているのだ……。

 街で、フェードインとレボリューションを繰り返す…黒にオレンジのゼブラ柄を目にしたときはA.Eフィールド全開状態だったせいで、ジャンプの飛距離が飛躍的に伸びただけでなく、顔にゼブラパンティがフワッと落ちてきた。

(何かが違う……こうじゃないんだ)

 僕はゼブラパンティを握りしめ、目指すべき方向性を見失っていた。

 何度ジャンプを繰り返しただろう……気づけば、色とりどりのパンティでポケットが、こんもりと盛り上がっていた。

(こういうことじゃないんだよ……欲しいのはパンティじゃない!更なる能力なんだよ、人を助けられる力なんだ!)

 握りしめた、蛍光ピンクのショーツを地面に叩きつけるように腕を振りおろし、ショーツをポケットに収める。


 そのとき…

「そこを動くな、お面の男!連続痴漢行為の現行犯だ!」

(シズシズ?…いや僕だ!)


 僕は慌てて、今レボリューションした女性のスカートに潜り込む。

 キャーキャー騒ぐ女性が、スカートを押さえてしゃがみこんだ。

 フガッ!

 僕の顔に女性のソレが押し付けられる。

(なに…なんかファサファサするし…なに…なんかA.Eフィールドを直接刺激してくる匂い…)

 手でどかそうと女性の太ももからウエストに手を這わす。

(アレ?布の抵抗が……ない…???)

 ………まさか……履いてない……系の人?

 レボリューションしたときは気づかなかった…黒い布面積の少ないパンティだと思っていた。

「大丈夫ですか?」

 男の声がする、見えないが解る…警官だ。

「出て来い貴様!白昼堂々、何をやってるんだ!」

「誤解だ!」

「何が誤解だ!馬鹿もん!早く出ろ!変態が!」


(あぁ…絶対絶命……なんだろう…心臓が8ビートを刻んでる…でも…A.EフィールドもMAX…恥ずかしいくらいに、痛いほど…追いつめられてるんだ…でも甘美な状況…もがくたびに漏れる女性の吐息……なんだろう…顔が濡れている…僕の汗?それとも…女性の……あぁ~…震えるぜ血液のビート…痛いくらいにヒート!)

 僕は唇と女性のソレを舐め…コクリと唾を飲みだ。

 ………!!!…??#$!!!!

 時の歯車が…カチリとハマった!

「Angle Meter ―!の時間だぜ!」


 僕は女性のスカートから這いだした。

 目の前の警察官を横目に、その場を立ち去る。

時が止まった世界は、少し靄がかかったようなクォーンという音が響く世界。

の世界だ。

「時は動き出す……」


 僕の後ろで何が起こったか…興味はない…彼らの目の前から、お面男が忽然と消えた、それだけのことだ。


 僕は、口の周りに付いた女性のをパンティで拭った。

(この能力こそ、僕の本来の力だ……)

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