第20話 性的三角形

 シズシズは幸い、現在無職で就活中だ。

 金は無いが…時間だけは持て余すほどある。


 かける言葉が無い…桜木さくらぎ 雪夜ゆきや 帰宅部所属です。


 ハローワーク帰りのシズシズと待ち合わせ。

 向こうからスーツが歩いてくる。

 現在16時…時間通りに表れるあたり…収穫なしであろう。

「やぁ雪夜くん♪待った~」

 なんかキモい…ショタ好きのオジサマって感じだ。

 反射的に尻の穴がキュッと閉まる。


「で?僕に頼みってなんだい?」

「えぇ…放っておけない能力者がいるんです……」

「能力者…」

「はい…ひとりは透明化する痴女…いん 乱子らんこ(仮名)」

「透明化…痴女…AVみたいだな」

「もうひとりは…病院で接触してきた、テレパスと念動力」

「念動力!私と同じか」

「いや…あの能力は明らかに悪意を感じた…いまは邪気の無い悪意だけど…あの感じだと、いずれ暴走する」


「雪夜くんが、仲間になれと言ったのは、もしかして…」

「はい…あの力は野放しにできないと思ったんです、でも、僕だけでは太刀打ちできないとも思いました」

「…なるほど…改めて協力するよ…雪夜くん」

 手を差し伸べるシズシズ、僕たちは熱い抱擁…いや握手を交わした。



 ……………

 いん 乱子らんこ(仮名)の確保、これは難攻を極めた。

 透明化の能力は欲しい。

 ついでに言うと、僕の瞬間移動もシズシズの念動力も女性を媒介にする必要がある。

 適任なのだ。


 探し始めて、1週間…痴女出没の情報を集めていたシズシズから連絡が入った。

 僕たちは、出没するとされる無人駅で張り込む。


 囮はシズシズだ。

 嫌なわけじゃないんだ…僕は、ほら顔が知れているから…だ。


 コツーン…コツーン…ハイヒールの音がする。

 街灯の向こうから、が歩いてこられる。


 シズシズが嫌そうな顔をしてぼくの方を見る。

 僕は無言で頷いてシズシズに作戦の継続を促す。


「あら…今夜の豚はスーツなの」

 絵にかいたような女王様来たー!

 黒いレザーのセーラー服。

 エナメルにテラテラ光るスーパーローライズパンティ。

 そのパンティを隠すつもりがまったくないスカート。

 胸元がガバッと開いたシャツ。


 シズシズがゆっくり僕の方を見る。

(逃げたい…瞬間移動ジャンプしたい…いん 乱子らんこのいないところへ)

 僕は涙目で頷いてシズシズに作戦の継続を促す。


 闇夜の空気を切り裂くムチの音がシズシズの背中から響く。

「イテェー」

「誰が叫んでいいと言った!」

「申し訳ありません」

「我慢するんだよ!アタシの愛を全身で受け止めなさい!」

「ありがたきお言葉…」


(ヤバい…シズシズが新たな扉を開こうとしている…戻れなくなる前に)

いん 乱子らんこ…まだこんなことをやっているのか」

「ん…」

 女王様が僕を見下すように見つめている。

「はっ!」

「あのときの…」

「そうだ…僕だ…」

 いん 乱子らんこが僕から距離を取る。

 カラーボールに警戒している。

「今日はそういうつもりで来ていない」

「えっ?アタシのすべてを視たくないのか?」

「見たいが…いや…そういう用事じゃない」

「フゴフゴフゴ……フガッ…」

 いん 乱子らんこに踏みつけられながらボールギャグを装着させられているシズシズが何事か訴えているが解らないので無視だ。

「アタシの、このスーパーローライズの奥、それ意外に、なんの用事があるの…」

「お前の能力が欲しい」

「アタシの?このムチがお前も欲しいのかい?」

「いや…ムチは遠慮したい」

「えっ×2」

 いん 乱子らんことシズシズが同時に驚いたように僕を見る。


 僕は、いん 乱子らんこに事情を話した。

 いん 乱子らんこはシズシズに跨りながら、聞いていた。

 シズシズの手がプルプルしている。

 時折、「フゴッ」と叫ぶのはムチが尻に放たれるからだ。

「そうなのかい…そんな危険な能力者が…いいだろう…アタシが調教してやるよ!」

 すっかり女王様が板についたいん 乱子らんこと連絡先を交換する。


 決戦の時は近い。


 地面が濡れている…シズシズのよだれが凄い…。

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