第25話 開く眼

 廊下の隅で、身を潜め…様子を覗う。

「ホホホホホホホホオ…」

 乱子の高笑いが響く廊下…。

「持ち帰るわよ!シズ」

「はい!よろこんで!」

 ベッドが廊下に飛び出した。

 乱子が美少年に跨っている…シズシズの念動力で空飛ぶベッド。

 アダルトピーターパンというか半裸ウェンディ?…。

(だめだ…プラス誘拐が付属しやがった…もうだめだ…シャレになんない)

「ゆ~き~や~捕まえたわよ!…ゴフッ!」

 ベッドが床に激突する。

 ゴロンゴロンと半裸で半透明の乱子というか、くっきりとした紫のパンティが転がってくる…。

 ベッドの下ではシズシズがジタバタしている。

(あぁ…滅茶苦茶だ…)

『貴様ら…ふざけんなよ!』

 美少年が空中に浮遊しながら額に青筋立てて怒ってる。

『死ね!』

 ガシャーンと窓ガラスが割れて、破片がシズシズを襲う。

「やめなさい!」

 廊下に女性の声が響く。

 ガラスがカシャカシャーンと床に落ちて砕ける。

 廊下の端に、淡い緑の着物姿の女性がシャナリと表れる。

 浮遊していた美少年が小刻みに震えだす。

 着物姿の美魔女がスッと美少年に近づく…ビクッと身体が硬直する美少年。

「シズシズ!揉め!」

 ベッドから這い出たシズシズに僕は叫んだ。

 反射的に美魔女の着物の半襟の下に手を突っ込むシズシズ。

(あぁ…着物って機能的だ…シュルッと入るよ…お香のようないい香りが…あぁ…ブラをしてない、布の下のコリコリは…あぁ…一生こうしていられる…)

「バカ!動きを止めるのよ!」

 乱子がワンピースを着ながら怒鳴る。

「イェス、ユァ、ハイネス!」

 無駄に発音がいい。

 美少年の動きがビタッと止まる。

『母様の胸を…揉みしだくなーーーー!』

 頭の中に、つんざくような声が響く。

 僕だけじゃないようで、シズシズも乱子も頭を押さえている、鋭い痛みが声と同時に走ったのだ。

「母様に触れるな…下郎」

 直の声?

 美少年の目が開く…。

 シズシズに揉みしだかれて美魔女の息が少し荒い…。

「聞こえないのか…離れろ!」

 シズシズの身体が後ろに吹っ飛ぶ。


「はぁ…はぁぁ…んん~もっと…はっ!おやめなさい迦楼人かると

「しかし母様の胸に…あの男が!」

「あぁ…とても良いところだったのに…いや…コホン」

 着物の襟をシュッと戻す美魔女。


「とりあえず…怪我を治します…少年…こちらへ」

「へっ?」

 僕は自分の鼻に指を当てる。

 美魔女がコクリと頷く。

 僕の手を優しく口元へ運ぶ…レロン。

 美魔女が僕の手を舐めた、先ほどのガラスで手の甲を切ったらしい。

 気が付かなかったが…。

「うぅん…チュッ、レロン…チュチュ…チュバッ♪レロレロ~ふぅん…あぁ…血の味…少年の血…傷の裂け目に舌が~はぁぁあん…あぁ…チュッチュッ…」

 美魔女が喘ぎながら、傷口を舐めまわす…。

(痛い…ような…気もする…んぁあ、いや気持ちいい…痛気持ちいい…)

「はぁぁ~あっあぁ…ふぅ~ん…いいわぁ…もう痛くないでしょ…」

 手の傷口が塞がっている…傷跡すらない。


(ヒーリング?)


 どうやら…また能力者を引き寄せたらしい…。

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