第17話 上は大火事 下は洪水

 勉強とは関係の無い知識は豊富な 桜木さくらぎ 雪夜ゆきやさ。


 最近、下着泥棒というか…強奪が相次いでいる公園付近を頼まれてないがパトロール中です。

 スカートからスカートへ連続ジャンプして結構遠くまで遠征してます。

 まぁ…気乗りしない事件なんだけど…連続ジャンプの練習のつもりで、こんなとこまで来ています。

 いまひとつ気乗りがしないのは、被害者が男性だということです。

 男がパンツ強奪されるって…どんな事件だよ…。

 警察も、やる気が起きないのか…とくに巡回強化している風もない。


 公園には、V系ですけどなにか?みたいな感じのバンドマンがバンギャルとベンチで話している。

 今夜は何事も起きないのかとパトロールを切り上げて、帰りのを探していると、男の驚く声が

「えっ?なに言ってるかわかんねぇし」

「いいから答えて」

 先ほどのV系と彼女の声が徐々に感情を高ぶらせて大きくなって聴こえてくる。

「ライブのとき、アタシを見てたでしょ!ねぇ!見てたよね!目があったもん!」

「知らねえよ!たまたまだろ!」

 どうやら彼女ではないようだ…察するに、ライブ終わりで寄ってきた娘をお持ち帰りして…みたいな感じだったんだけど、なんだかメンヘラでしたみたいなオチか。

「ねぇ答えてよ…当たったら…アタシのすべてを好きにしていいから…ねっ?」

「めんどくせぇな…風呂だろ?風呂」


 バンギャルがゆらっと立ち上がる……。

 ゴスロリの服を脱ぎだす。

「おい…ココで脱ぐなよ!ホテル行こうぜ!なっ?」

「ホテル?なんで…不正解だったお前がアタシを自由にできるんだ?調子に乗るなよ」

 あきらかにバンギャルの雰囲気が変わったのが遠目でも解る。

「なにが不正解だ!淫乱が!ここでしたきゃヤッてやるよ!早く脱げ!」

(なに大声で公衆猥褻宣言してんだ?…困ったものだ…まぁ人が見てますよ~って感じで側を横切って冷静になっていただこう…やれやれだぜ)


 僕が彼らのほうへ歩き出すとアレ?V系しか見えない……バンギャルがいない…帰ったのか?

 しかしV系は地面に座って足をバタバタしているが?なんだ?

「なんだよ…やめろよ…」

「あはははははっ、お前も脱げ!ほらっ!撮っててやるからさ~!早く脱げ!罰ゲームだよ…アタシを見ながら自分で慰めるんだよ!パンツの中に出すんだよ…さぁ!そしてそのパンツを私に差し出すんだ!」

「見ながらって…視えねェし…なんなんだオマエ?」

 なんか様子が変だ…というか…なんか記憶をくすぐるものがある…この感じ…アレだ…。


 イカれた性癖…困った思考…大胆な行動力…矛盾した能力…。

 近づいて、ゴスロリ服の上にパサッと落ちてる紫の派手なシースルーショーツ…見覚えがある…。


「おい…お前…助けてくれ…」

 すでに、ズボンを脱がされボクサーパンツ1枚のV系がパンツを抑えて僕にすがってくる。

 僕は無言でV系の股間をズムッと蹴りあげた。

 股間を押さえたまま倒れ込むV系。

 V系も紫のパンツ…おそろいみたいでイラッとしたのだ。


「久しぶりだな…淫乱子いん らんこ

「誰だ…お前?」

 どこにいるかは解らん、とりあえず紫の派手なショーツを指さし話しかけてみたものの、

 なんか後ろから声がする…まぁいい。


「お前のソコを寸前のところで見逃した少年だ」

「……思い出した……アタシの公開自慰を拝んだ少年だ!あぁぁあああ…いい…思い出すと濡れてくる……うぅうううぅうぅぅぅ…あぁ…いぁい…」

「下着ドロまでしてるとなると…見過ごせないな!」

 僕は振り向きざまに蹴りを放つが宙を切る。

(相変わらず、厄介な能力だ…)

「少年の動画…欲しい…恥ずかし動画!欲しい~…問題…」

「はっ?問題?」

(メンヘラ…自由だ…KYだ…)

「上は大火事…下は洪水…な~んだ?」

(風呂?じゃないよな…はっ!V系も風呂って言ってたな…答えられないと公開処刑自慰撮影ってことか~性質たち悪いな~マジで歪んでるな~メンヘラ怖ぇよ…)

「少年…考えてる…うん大丈夫だよ…正解したら…お姉さんを一晩中好きにしていいのよ…あぁ…少年がアタシを貪るように求めてくる~愛おしい…愛おしいよ~…でもダメ!外したら!お仕置き!お預けして…恥ずかしく濡らしたパンツを貰うの~…恥ずかしいシミパンツ…あぁ~欲しい…シミパンツ欲しい~……答えなさい…火照ったアタシの耳元で答えなさい!早く!もう恥ずかしいくらいにお姉さんはビショビショなのよ!答えて!」


(火照って…ビショビショ……)

 僕の鼻を香水とイヤラシイ香りが包む…耳元では荒い息と吐息…そしてイヤラシイ音が響く。

「答えて!」

 メンヘラが僕の顔を掴んで地面に押し付ける。

 おそらく僕の頭部に馬乗りになっている。

(なんかヌルヌルする…)

 僕は口を塞ぐ下腹部を両手でどかして、叫んだ。

「答えはオマエだ!淫乱子いん らんこ!顔は火照って大火事、アソコは濡れて洪水、お前のことだ!」

「いやぁぁぁあぁあぁぁ…正解よ!好きにして…ここでも、そこでも、あそこでも…どこでもあなたの好きにして~」


「そうさせてもらおう…」


 僕はポケットの防犯ボールをいくつも淫乱子いん らんこに投げつけた。

 あの時以来、コイツ用に準備していたんだ。

 オレンジやグリーンの蛍光塗料が淫乱子いん らんこの身体のラインを暗闇に浮かび上がらせる。

「いやぁぁぁぁあぁぁぁっぁ…アタシ視られちゃうぅぅぅうぅ」


「しばらくは大人しく反省していろ…今夜は勘弁してやるが…今度は警察行きだ!」

 グリーンのおしりが、紫のシースルーショーツに包まれる。

「できれば、その能力ちから人助けに使ってくれ……」


 手ごろなスカートが見当たらないので、電車で帰りました。

「ミッションコンプリート」

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