第6話 Open the Libido 前篇

 HELLO♪ My name is YUKIYA《雪夜》 SAKURAGI《桜木》 。


 今日は風がとても強いデ~ス。

 登校中もヒラヒラ ヒラヒラ チラチラ チラチラ 楽しいデスネ。


 頭の中で、花から~花へ~とチューリップの童謡が流れるくらい登校が楽しい。

 で……愉しみ過ぎて遅刻した……。

 今さら走る気にもならないほどの遅刻。

 どうでもよくなって、商店街をうろつく。

 雨が強くなってきた、天気予報で台風が、かすめるようなことを言っていたのでそのせいだろう。

(こんな日だからこそ、パトロールだ)

 もちろん嘘だ…制服のスカートが短いJKのお姉さんを駅前で観察しているうちにJKが居なくなった…気づけば、始業時間…駅前が静かになっていたのだ。

(そうだ…遅刻しよう……)

 いいわけは……向かい風がキツかった。


 帰宅部とは、そもそも登校しなければ活動できないのだ。

 登校してない今、僕は帰宅部ではない。

 自由人、つまりコンビニで買い食いしてもOKなのだ。


 コンビニは僕と女性の店員さんだけ、店内でおにぎりを選んでいると、

 Kaboom!

 背中から大きな破壊音がした。

 振り向くと、コンビニ正面が半壊している。

(なにが起きたんだ)

 入口のほうに歩き出すと店員さんが倒れている。

「大丈夫ですか?」

 意識が無い…頭を打ったようだ、レジに伏せたまま動かない。

 側頭部から出血している。

(ヤバそうだ……)

「変身!」

 とりあえずお面を装着する。

「さて…フェード……イ…」

(しまった…店員さんスカートじゃない)

 考えてみれば当たり前だ。

 スカートでする仕事ではない。

 とりあえずスカートを探さねば……。

「ない…」

 あるわけがない…コンビニにスカート売ってるわけがない。

 動揺してるのか……僕。


 どうする……外に助けを求めなければ……一刻を争う状況だ。

(南無三!)

 僕は店員さんのジーンズを、ずり降ろす。

 鮮やかなブルーのガードルが目の前に現れた。

 銀の刺繍が施されたブルーのガードル。

(なるほど……これは良いモノだ……)

 言ってる場合じゃない!

 僕は制服の上着を脱ぎ、店員さんの腰に巻き付ける。

(うまくいってくれよ……)

「フェードイン!」

 眼前にブルーのガードル。

(このブルーの下は何色か?青系か…それともピンク?…白か!それもいいな…あぁ…きた…きたよ…少し汗の匂いが…柔軟剤の香りに混ざる……昨夜からいたのだな……汗の方が勝っているよ……頑張ったんだね…いとおしいよ…このおしりが愛おしい…)

「コンプリー……」

(はっ?どこに?飛べばいい……外は見えないんだぞ)

 だめだ…僕は動揺している……。


 自力で脱出するしかねぇ!

 瓦礫の撤去は無理そうだ、僕はトイレの窓から脱出を試みた。

 鉄格子を外し、窓枠を外す。

 強引に身体をねじ込んで大声で叫んだ。

「誰かいませんか!助けてください!」

「大丈夫か?」

 僕は誰かに引っ張り出された。

 30代のサラリーマン。

「怪我は?」

「僕は大丈夫です。中に店員さんが…急いで怪我をしている…救急車を、早く!」

「落ち着け…大丈夫…」

 サラリーマンは救急車を手配してくれた。

「中の人は意識があるのか?」

「いや…ない…頭からひどい出血をしています、瓦礫をどかしてからなんて間に合いそうもありません」


 サラリーマンは少し考えて

「封印していた力を使わねばならないということか……」

 その顔は、何かを決意したヒーローの顔だった。


続く。

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