三人称神視点に関する追記

第15話:神視点での心理描写深度

 神視点にしたときに気をつけることとして、「心情描写の深いところに入った時は、特に細かく視点を動かしちゃ駄目よ」と言うことでしょう。


 神視点は、むしろあまり深い心情描写をしない方が無難だと思います。

 もちろん、ここぞという時はしていいのですが、その時はしばらく視点を固定した方が無難です。


 心の奥底に入ったカメラが出入りするのは、かなり違和感があります。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「……む? クラスとは、よくわからぬが。まあ、プリースト……うむ。少し違うが、そのようなものかもしれぬ」


 天道は、「クラス」という単語がひっかかった。すぐに思いついたのは、学校のクラスだったが、もちろん違うだろう。

 ふと、彼は中学生の頃を思いだす。クラス替えの時に、大好きなあの娘と同じクラスになれないかと、守護明王たる不動明王に祈祷したものだ。

 そういえば、目の前の娘に似ているなと思っていた。そういえば、あのときの彼女もこんな顔をしていた……。


(やっと見つけた!)


 今までうつむき加減だったフィカは、顔をあげて喜んだ。

 それはもう嬉しさ爆発である。なにしろ彼女は、ずっと探していたのだ。

 目の前の僧侶は少し怖いがプリーストなら問題ない。


「ああ! この出会い、女神に感謝を!」


 突然、彼女は両手を組んで天を仰ぐので天道は驚いた。


(な、なんだ??)


 しかし、フィカはかまわず祈りを捧げる。

 もちろん、彼女の信じる女神アフロディーテにだ。彼の女神に祈ったからこそ、この出会いがあったに違いないと信じている。


(よきかな、よきかな)


 天道はそんな彼女をずっと見ていた。

 魔術師の中には、確かに女神の力を使う者もいるが、感謝を捧げるのは珍しいことだ。そう思いながら、天道は角張った顎を撫で、その様子をほほえましく見ていた。


「……あ。すいません! 一人で盛りあがってしまって」

「いや。かまわぬ。感謝を忘れぬことは、すばらしいことだ」

「はい。すいません!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 そこまで深い心理描写ではありませんが、天道→フィカ→天道→フィカ→天道と視点が移り変わっています。

 どうでしょうか、読みやすいですか?

 たぶん、わざと読みにくく書いたので、読みにくいと思うのですが(笑)。


 そこで下記は、天道→フィカ→天道にまで落とし込み、台詞で地の文の視点を切り替えてみました。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「……む? クラスとは、よくわからぬが。まあ、プリースト……うむ。少し違うが、そのようなものかもしれぬ」


 天道は、「クラス」という単語がひっかかった。すぐに思いついたのは、学校のクラスだったが、もちろん違うだろう。

 ふと、彼は中学生の頃を思いだす。クラス替えの時に、大好きなあの娘と同じクラスになれないかと、守護明王たる不動明王に祈祷したものだ。

 そういえば、目の前の娘に似ているなと思い、顔を見つめた。


 とたん、今までうつむき加減だったフィカは、顔をあげて喜びをあらわにする。


「ああ! この出会い、女神に感謝を!」


 突然、彼女は両手を組んで天を仰ぎ、天道を驚かせた。

 しかし、フィカはかまわず祈りを捧げる。

 もちろん、彼女の信じる女神アフロディーテにだ。彼の女神に祈ったからこそ、この出会いがあったに違いないと信じている。

 それはもう嬉しさ爆発である。なにしろ彼女は、ずっと探していたのだ。

 目の前の僧侶は少し怖いがプリーストなら問題ない。


(よきかな、よきかな)


 天道はそんな彼女をずっと見ていた。

 魔術師の中には、確かに女神の力を使う者もいるが、感謝を捧げるのは珍しいことだ。そう思いながら、天道は角張った顎を撫で、その様子をほほえましく見ていた。


「……あ。すいません! 一人で盛りあがってしまって」

「いや。かまわぬ。感謝を忘れぬことは、すばらしいことだ」

「はい。すいません!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 次は、心理描写を浅くした場合です。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「……む? クラスとは、よくわからぬが。まあ、プリースト……うむ。少し違うが、そのようなものかもしれぬ」


 天道は、中学生の頃に大好きだった娘の面影を目の前の娘に重ねる。


(やっと見つけた!)


 一方で、今までうつむき加減だったフィカは、顔をあげて喜んだ。


「ああ! この出会い、女神に感謝を!」


(な、なんだ??)


 突然、彼女は両手を組んで天を仰ぐので天道は驚いてしまう。


 しかし、フィカはかまわず祈りを捧げる。


 天道はそんな彼女をずっと見ていた。

 魔術師の中には、確かに女神の力を使う者もいるが、感謝を捧げるのは珍しいことだ。そう思いながら、天道は角張った顎を撫で、その様子をほほえましく見ていた。


(よきかな、よきかな)


「……あ。すいません! 一人で盛りあがってしまって」

「いや。かまわぬ。感謝を忘れぬことは、すばらしいことだ」

「はい。すいません!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 どんな感じでしょうかね。

 感覚的に言っていることがわかってもらえれば幸いです。

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