第3話:一人称単視点

■長所

・特定キャラクターの心理を描ける。

・特定キャラクターに感情移入しやすい。

・親しみやすい地の文になりやすい。

・視点移動がないため、読者にわかりやすい。



■短所

・特定キャラクターが、特異な性格の場合、感情移入がむしろしにくい。

・特定キャラクターの視界に縛られる。

・特定キャラクターの語り口に地の文が縛られるため、あまりこった描写はできない。



■総論

 一番取っつきやすそうで、意外に落とし穴がある描写です。

 その落とし穴は、短所を見るとわかるとおり、偏に「特定キャラクターがどんな人物か?」によります。


 特定キャラクターが、たとえば「う○ち」を食べて「おいち♥」と言う変態だった場合、たいていの読者が感情移入できないでしょう。


 また、地の文で美しい描写をしたくても、特定キャラクターがそういうことを口にするタイプじゃないと描写できません。


 さらに特定キャラクターがニブチンの朴念仁だった場合、周囲の心理に無関心なために、主観的な心理描写もしにくくなります。

 「ラムちゃん……もしかして、俺のこと好きなんじゃないか? 声がうわずっているし、目もウルウルだ!」とかの「好きなんじゃないか」は、特定キャラクターが気がつくからこそ書ける話です。


 一人称のキャラクターは、個人的に巻きこまれタイプか、俺様的に引っぱっていくタイプの両極端に向いている気がします。

 特に、読者の等身大となるキャラクターに向いています。


 いろいろな事情が複雑に絡み合うタイプの話ですと、それに対応できるぐらいのキャラクター性が必要になります。

 そのキャラクターに読者がついていけるかという問題も出てきます。


 感情移入しやすいからという理由だけで一人称を選ぶと、後で困ることもあるかもしれません。

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