第20話:立脚点の移動例

 立脚点の移動――カメラワーク――の例を僭越ながら書いてみます。

 例文では、彼から彼女に引き渡すパターンを示してみます。



――――――――――

 彼はたくましい腕を伸ばし、お皿からパンを取った。

 そして、そのまま一口かじる。

 中にはあんこが入っていた。

 その甘さは、彼にとって思い出の味である。


「ああ、懐かしい味だ……」


 彼が嬉しそうに呟く。

 それを見ていた彼女も、思わず微笑んだ。

 彼女は、きっと彼が喜んでくれると信じて、このパンを買ってきたのだ。

――――――――――


 これは台詞を使った切り替え方法です。

 「その甘さは」は彼の心情→台詞を出すことでカメラが彼から外に→そこから彼の外観→彼女の外観→そのままカメラは彼女の視線に→そのまま彼女の心情へというパスワークです。

 外から内、内から外をくりかえしています。



――――――――――

 彼はたくましい腕を伸ばし、お皿からパンを取った。

 そして、そのまま一口かじる。

 中にはあんこが入っていた。

 その甘さは、彼にとって思い出の味である。

 彼は、彼女に喜びを伝えようと微笑んだ。

 つられるように、彼女も微笑む。

 彼女は、きっと彼が喜んでくれると信じて、このパンを買ってきたのだ。

――――――――――


 これは明確に動作でパスを出す方法です。

 自然にカメラが、彼から彼女に移ります。

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