第21話:注視点

 注視点は、なにを視ているのかという要素です。

 立脚点がカメラならば、注視点はそれで撮影している映像シーンです。


 前回の立脚点の例文でもわかるとおり、立脚点がぶれれば注視点も結果的にぶれます。

 しかし、立脚点がぶれなくても、注視点がぶれることはあります。

 すなわち注視点は三人称だけではなく、一人称でもぶれることがあります。



――――――――――

 彼はたくましい腕を伸ばし、お皿からパンを取った。

 そこに暗殺者が影からナイフを投げてくる。

 彼はテーブルにあったフライパンに手を伸ばした。

 ナイフが、虚空を切り裂き彼の頭にまっすぐと向かってくる。

 ぎりぎりで彼は、ナイフをフライパンで受け止めた。

――――――――――


 上記の例文の注視点シーンが、激しく切り替わっているのがわかると思います。

 たぶん、立脚点は彼を横から見ている感じなのでしょう。

 しかし、そこにあるカメラは映す対象を激しく、彼→パン→暗殺者→ナイフ→彼→フライパン→ナイフ→彼とナイフとフライパン(笑)と変わっています。

 この例で分かるとおり、アクションシーンでありがちです。


 上記の例を修正するとしたら、みなさんはどうやって直しますか?



――――――――――

 僕は川の中を覗きこんだ。

 魚たちが泳いでいる。

 その時、火山が黒煙を上げて噴火した。

――――――――――


 一人称の例。

 水の中の映像に、噴火の様子を重ねられてもシーン切り替えができません。



 このように当然ながら、注視点も結局はカメラワークの結果です。

 視点ぶれを防ぐには、どこからどのような映像を今、撮影しているのかを意識しながら書くのが大事ということになります。


 ただし、立脚点に比べて注視点のぶれというのは、あまり見ない気がします。

 むしろ、次の語り手のぶれの方が多いようです。

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