第9話:三人称俯瞰視点

 正直、苦手です(笑)。


 これ、書くのは簡単ですが、おもしろく見せるのは非常に難しい。

 感情は見た目の変化しか書けませんし、キャラクターの心を推測もすることができません。

 ただ、()などで心理台詞を書くのはありではないかと思います(厳密にはどうなんでしょうかね……)。

 淡々と事実関係を述べていくので、単調になりやすい表現です。


 たぶん、Webラノベには向きません。

 試しにサンプルの文頭を変換してみます。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



(――成仏した)



 不動明王の梵字を背中に刺繍された黒い法衣をまとった【天道】は、目の前に広がる花畑を見ていた。


「おお。ここが浄土か……」


 白と桃色の愛らしい花々が広がる広々とした大地は、極楽の風景。

 彼はその地平が見える大地を見て、花の香りを吸いこむと、一滴の涙を流した。


九鬼くがみ一門の退魔師として、つい先ほどまで、恐ろしき魔物と戦いを繰り広げていたなど嘘のようだ……)


 錫杖を片手に、編み笠をあげて、日差しを受けて目許も口許も緩ます。


「よきかな、よきかな。このようなすばらしき地に至るのならば、死して悔いなし。これも御仏の慈悲……むっ!?」


 天道は、体をぴくりと震わした。

 そして、勢いよく背後に視線を向けた。

 そこにいたのは、巨大な物の怪だった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 うん。めんどくさい(笑)。


 「不動明王呪を納めし」「九鬼くがみ一門の退魔師」とかは、俯瞰しているカメラからはわからないのでかけません。

 まあ、名前はたぶん大丈夫だし、自己紹介的に「九鬼くがみ一門の退魔師」ぐらいは許されるのかもしれません。


 ただ、「そう悟った」「感動のあまり」という感情は書けなくなります。

 「幸福感」も書けませんから、少し微笑ませてみました。


 過去のことは地の文で語れないので、心の台詞ですが、これが使えないと非常に辛いと言うことがわかります。


 アクションシーンならいけるかもしれませんが、本当に規制が厳しい書き方です。

 事実が淡々と進むような話、特にショートとかなら独特の雰囲気を醸し出せますが、たぶん私はプロローグ等で使うことがあっても、全体で三人称俯瞰視点を使うことはほぼないと言えるでしょう。

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