片腕を失った少女アイシャと、片目を失った黒竜のジーヴ。ふたりが出会い、それぞれが探し求めるもののために共に旅をする物語です。
尊大に振る舞うジーヴに、いつか見返してやると意地を張るアイシャ。喧嘩するほどなんとやらと言いますが、素直じゃないふたりのやりとりが楽しく、ニヤニヤしてしまう場面も。
物語は最後までどうなるのかわからず、ハラハラドキドキの連続でした。パズルのピースが合わさっていくように、謎がゆっくりと解けていく面白さもあります。タグにも書かれていますが、ハッピーエンドに辿り着いた時は晴れやかな読後感を味わえました。
ふたりの旅路をもっと見ていたかったと思える物語。
竜と旅をしてみたい方、旅するファンタジーが好きな方にオススメしたい作品です。
ああ、このふたりのやり取りが好きだ!
「竜は人助けはしない」と、気高き竜の誇りを貫くジーヴ。
「あんたが言ったこと。後悔させてやる」と、息巻く少女・アイシャ。
竜は片目を失い、少女は片腕がない。だからお互いがお互いのないところを補うパートナー……なのだが、決して馴れ合ったりはしない。
でも、その反面、心のどこかで強く結ばれている。
互いに憎まれ口を叩きながらも離れたりはしない、このどこか腐れ縁の幼馴染みたいな心地よさがたまらない。
アイシャは生き別れた兄を探し、ジーヴは全滅してしまった同朋・黒竜の生き残りを探して旅をする。
物語はやがて世界を揺るがす陰謀へと繋がっていくのだが、正直なところ、もっといろんなところを旅して欲しかったとふたりには不謹慎な事を考えるぐらい、彼らのやりとりが楽しかった。
多分このふたりとなら、自分は何十万、何百万の文字の大海でも一緒に渡っていける(蛇足だが、それぐらい文章のクオリティも高い)。
物語が幕を閉じた後の外伝も文句なしに最高だった!
片腕を失った少女アイシャと、片目を失った竜ジーヴの二人が――同じに日に故郷を失った事件を切っ掛けに始まった旅の物語。
お互いが欠けたものを埋めあうようにと契約したはずなのだが、このコンビがなかなかの凸凹コンビで、さらに二人ともがかなりのツンデレ!(ツン成分九割くらいで構成されてます)
ツンデレ×ツンデレというかなり嬉しいキャラクター構成で、読んでるだけでニヤニヤできます。傲慢な竜と、ツンケンしたアイシャの掛け合いは必見です。
物語の軸はアイシャの兄を探し、そして二人が故郷を失った事件の真相にたどり着くのですが、最後の最後までどう決着がつくか分らず、ハラハラします。
しかし、一言だけ言いたい……「ジーヴ、何故だあああああああっ?」
この作品には2つの楽しみがあります。
一つは、骨太で王道なストーリー展開。背骨のしっかりとした物語を、格調高い文章が肉付けしているためとても読みやすく、世界に入り込みやすい。
そしてもう一つが、竜とのコミュニケーションです。
ドラゴンの出て来るファンタジーは数多くありますが、この作品における竜(ジーヴ)はどこか超然としていながらそれでいて人情(?)のようなものも併せ持っており、このジーヴとアイシャとの掛け合いがまた楽しいのです。
スッキリした大団円を迎える物語は後味も良く、最後まで読めば必ず心地良い満足感を味わえるでしょう。
ファンタジー好きな方には強くおすすめしたい作品です。
隻腕の少女アイシャは、行方不明の兄を捜すために。
隻眼の竜ジーヴは、仲間の生き残りを捜すために。
あくまでギブ・アンド・テイクの、二人の旅。
人と竜は生きる時間も、物事の捉え方も違う。
尊大なジーヴはアイシャを「小娘」呼ばわりし、「非常食」と公言。
アイシャは苛々し、いつか鼻を明かしてやると誓う。
一緒に旅しているのに、こうも仲良くないコンビって新鮮です。
竜が人型にもなれる理由の設定には唸りました。
アイシャの故郷と、ジーヴの里を襲ったのは何者か?
異なる種族が、同じ世界で共存するということ。
宗教。
世界そのものの姿。
全てが結びついて明かされる真相は、見事でした。
最後に。
ジーヴ狡いよ!
「俺に惚れてくれるなよ」は無理だよ!
理由も分からないまま片腕になった少女と、理由も分からないまま仲間を失った竜が、それぞれの目的のために行動を共にする。そんな旅には、甘い恋心もなく、心地よい友情すらなく、とにかく過酷。それでも少女が前を向いていけるのは、ひたすら兄を想う心……。
純粋で勇気溢れる女の子の成長と竜との交流を描いた物語、かと思いきや、少女が片腕になった理由の手がかりを掴んだとたん、ストーリーは一気にミステリアスに動き、謎は壮大になっていきます。バラバラに見えたファクターがラストですべてつながる時、読み手は、このファンタジー作品の根底に込められた現実的なメッセージを受け取ることになるでしょう。
一人称で描かれる世界が美しく、とても映像的です。人型が魅惑的な竜のジーヴは物語をストイックにけん引し、主人公とは対照的な性格のお兄さんは、そのストイックな物語の清涼剤。二人の個性が物語をさらに味わい深くしています。さりげなく登場する「小物」にも注目すべし!
女の子は謎の集団に村を焼かれて故郷を失います。竜も謎の人物の襲撃により棲み処を襲撃され彼を残して全滅しました。
二人とも悲劇にみまわれたときに、身体の一部を失っています。女の子は片腕を失い、竜は片目を失いました。どちらも普通に生活するにも大切な部位です。だから二人はお互いの弱点を補完しながら旅を始めました。大事な目的があったからです。
女の子は音信不通の兄と会うために。竜はこの世界のどこかに残された同胞を探すために。どちらも敵討ちよりも近しいひとを探すための動機が大きいわけです。
しかし近しいひとを探せば探すほど、自分たちに悲劇をもたらした謎に迫っていくことになります。
いったい誰が女の子の故郷を焼いたのか。いったい誰が竜の棲み処を襲撃したのか。
その答えは、奇妙なほどに焦点が重なっていくことになります。
どんな焦点が隠されていたのか。女の子と竜は旅の目的を達成できたのか。すべてはあなたが読むことで補完されるでしょう。
異世界ファンタジーながらメッセージ性も強い作品だと思います。
異なる種族が共存を図る意味について考えさせられます。
種族を無闇に峻別することは、幸せを生まない。拡大解釈かもしれませんが、現世界における民俗や宗教、国境間の紛争にも当てはまるかもしれません。
私はファンタジーをあまり読んだことがないのですが、決して安っぽい文章ではなく、かと言って堅苦しすぎず、冗長でもない。適度な緊張感を持って綴られます。
何よりも、主要登場人物(竜含む)の三人が良いですね。
キャラクターがしっかりしていて読んでいて楽しいです。
特に、ジーヴの言動は老獪でありながらどこか痛快であり、長く生きてきた竜ならではの機転で読者の私たちを楽しませてくれます。
読後感も良いですね♪♪
一晩にして故郷を失い、片腕までをも失った少女。
一晩にして仲間を失い、片目までをも失った黒竜。
二人は互いに利益が合致したことで、互いの求めるものを探して旅に出る。
決して仲がいいというわけではなく、あくまでもお互い目的のために力を合わせているだけ。
そこには安易ななれ合いはなく、行動の端々で種族の違いによる考え方の違いや感じ方の違いが現れます。
そう……いいつつも、次第に二人の行動に、感情に変化が生まれつつあるのが読んでいてつい顔がニヤけてしまいました。
1年以上に渡る旅の末、彼らが見つけたものは何だったのか。
彼らが故郷を、仲間を失った本当の理由とは?
貴方も彼らと一緒に旅をしてみませんか?
とても素敵なお話、素敵な世界でした。
隻腕の少女と、隻眼の竜。
二人は相棒でも友達でもなく『契約』のもと、旅をします。
少女アイシャは行方不明の兄を探して。竜のジーヴは同胞の生き残りを探して。
「竜は人を助けない」と言うジーヴですが、なんだかんだでアイシャを気にかけてるじゃん、とツッコミたくなる、そんな彼とアイシャのやり取りはとても微笑ましく楽しいです。
終盤の盛り上がりはとてもドキドキしました。二転三転する展開と、解決の仕方がとてもよかった。
ラストはほんの少し寂しくなるけれど、とてもうれしくなるハッピーエンドです。
本当に楽しく、とても素敵な読後感でした。
謎の騎士団に故郷を焼き滅ぼされた夜、左腕を失ったアイシャは、
同じ夜に同族を皆殺しにされ、右目を盲いだ黒竜に命を救われた。
生き別れの兄を捜すためと、生き残りの同族を捜すため、
利害の一致したアイシャと黒竜は、契約して協力関係となる。
巨大な黒竜は、ある目的における利便性の観点から、
人間とよく似た美しい姿を取ることができるのだが、
人型となった黒竜、通称ジーヴの尊大さが何とも魅力的。
直情的かつ素直じゃないアイシャとのやり取りがまた楽しい。
作中の世界は、ヨーロッパの中世ではなく、近代初頭。
大陸には環状の線路が通って蒸気機関車が走り、
飛行船が開発され、騎士や衛兵は銃も携えている。
一方で海への進出は遅く、新大陸を求めて調査が行われたばかり。
そうした世界観のあり方が、説明的にならず提示される。
語り口がうまく、物語世界の骨格が安定しているから読みやすい。
人間のアイシャは竜の桁違いな身体能力や時間感覚や食欲に驚き、
竜のジーヴは人間が短期間で成し遂げる技術発展を不思議がる。
しかし、惜しむらくはその短さ。
7万5千字でさっくり読み切ってしまうにはあまりに魅力的で、
もっとたくさんアイシャとジーヴの旅を追っていたかった。
痛みを伴いながらも心躍るファンタジー冒険譚、すごく好きだ。
人間には干渉しないという主義を持つ竜のジーヴ。
冷たい物言いをされながらも、主人公アイシャは彼に何度も助けられます。
まだ見ぬ新大陸を巻き込む旅は壮大であり、そして全体のストーリーはとてもドラマチック。最後の切なさもとても良かったです。
竜と人間の寿命差についても不思議で雄大な実感をすることができました。
前に何かに書いてあったのですが、人の寿命を超えた生き物から人間を見た時を想像するには、犬と過ごした時の感覚を思い出すといいそうです。犬との10ー15年は長いようで短く、短いようで長い。(もちろん人と犬、竜と人ではまた条件が異なるとは思いますが、、)
ジーヴの深い愛情や優しさや、包容力に惹かれました。
また、途中から描かれたアイシャの兄も夢に満ちたとても好ましいキャラクターで、再会を願うアイシャにすんなり共感してしまいました。
感動してうるうるしました。とても面白かったです。