利発で勇敢な少女のピュアでストイックな物語

 理由も分からないまま片腕になった少女と、理由も分からないまま仲間を失った竜が、それぞれの目的のために行動を共にする。そんな旅には、甘い恋心もなく、心地よい友情すらなく、とにかく過酷。それでも少女が前を向いていけるのは、ひたすら兄を想う心……。

 純粋で勇気溢れる女の子の成長と竜との交流を描いた物語、かと思いきや、少女が片腕になった理由の手がかりを掴んだとたん、ストーリーは一気にミステリアスに動き、謎は壮大になっていきます。バラバラに見えたファクターがラストですべてつながる時、読み手は、このファンタジー作品の根底に込められた現実的なメッセージを受け取ることになるでしょう。

 一人称で描かれる世界が美しく、とても映像的です。人型が魅惑的な竜のジーヴは物語をストイックにけん引し、主人公とは対照的な性格のお兄さんは、そのストイックな物語の清涼剤。二人の個性が物語をさらに味わい深くしています。さりげなく登場する「小物」にも注目すべし!

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