【埋】跳ねっ返りツンデレ隻腕娘の旅の友は、尊大なるツンデレ隻眼竜

謎の騎士団に故郷を焼き滅ぼされた夜、左腕を失ったアイシャは、
同じ夜に同族を皆殺しにされ、右目を盲いだ黒竜に命を救われた。
生き別れの兄を捜すためと、生き残りの同族を捜すため、
利害の一致したアイシャと黒竜は、契約して協力関係となる。

巨大な黒竜は、ある目的における利便性の観点から、
人間とよく似た美しい姿を取ることができるのだが、
人型となった黒竜、通称ジーヴの尊大さが何とも魅力的。
直情的かつ素直じゃないアイシャとのやり取りがまた楽しい。

作中の世界は、ヨーロッパの中世ではなく、近代初頭。
大陸には環状の線路が通って蒸気機関車が走り、
飛行船が開発され、騎士や衛兵は銃も携えている。
一方で海への進出は遅く、新大陸を求めて調査が行われたばかり。

そうした世界観のあり方が、説明的にならず提示される。
語り口がうまく、物語世界の骨格が安定しているから読みやすい。
人間のアイシャは竜の桁違いな身体能力や時間感覚や食欲に驚き、
竜のジーヴは人間が短期間で成し遂げる技術発展を不思議がる。

しかし、惜しむらくはその短さ。
7万5千字でさっくり読み切ってしまうにはあまりに魅力的で、
もっとたくさんアイシャとジーヴの旅を追っていたかった。
痛みを伴いながらも心躍るファンタジー冒険譚、すごく好きだ。

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