第16話 オフィスに戻って
私たちの四神倶楽部の初活動、それから1週間が経ちました。
今回、私たち4人はすべてが急なことで、会社に多大な迷惑を掛けると思い、退職願いを用意していました。
しかし、部長の粋な計らいで、なんとか勤めに留まれるようにしてくれました。
多分、給料は減らされるでしょう、されど有り難いことです。私たちはいつもの仕事に復帰でき、部長に感謝感激
そんなある日、私はパソコン画面に頭を突っ込むようにして、企画書作りに没頭していました。そんな時です、いつの間にかミッキッコが横に寄り添ってきていました。そして耳元で囁くのです。
「ねえ、龍斗……、もうそろそろでしょ」
私は突然の話しで、何のことかわからず、「何が?」と問い返しました。するとミッキッコはさらに声を潜めて、囁いたのです。
「一条戻り橋で、私がいた5月3日から救い出してくれたでしょ」
「ああ」
私にとってそれはもう随分と昔のこと、今さらそれがどうしたんだよと言い返しそうになりましたが、その前にミッキッコはさらに妖しく囁いてきたのです。
「帰りの新幹線で、私言ったでしょ、憶えてる?」
私はまだミッキッコが何を言いたいのか、その真意が読み切れず、ポカンとしていました。すると、ミッキッコはここが神聖なオフィスであるにも関わらず、余計に悪戯っぽい目つきとなり言ったのです。
「青龍と朱雀の間にできる子供って、一体どんな子供になるんでしょうね、ってね」
私はミッキッコのこの言葉で思い出しました。しかし、すぐにはこれに答えず、黙り込んでしまいました。
「佳那瑠と悠太君はどうも一緒に暮らすことを決めたようよ。ねえ、私たちは……、どうすんのよ?」
ミッキッコが詰め寄ってきました。事ここに至れば、私は歯切れが悪かったですが、もう答えざるを得ません。
「うーん、それって、愛の同盟か? 俺たちもそろそろかな」
この愛の同盟、それは私とミッキッコのデスティニーなのかも知れません。
私は覚悟を決めて、パソコンの画面に文字を打ち込みました。
――結婚しよう――と。
これを目にしたミッキッコは、私の決意を充分感じ取ってくれたのでしょう。その後、笑ったのですよ、ニッとね。
そして、ミッキッキッコは何事もなかったような顔をして、自分のデスクの方へと引き上げて行きました。
確かに業務中であり、こんな秘密のやり取りをしていた私たち、ちょっとやばかったです。だがその分、私は胸が高鳴り、嬉しかったです。
しかし、振り返ってみれば、ここに至るまでのいろいろな出来事は学生時代の友人の槇澤良樹にばったり出逢ったところから始まりました。
そんな中で、私とミッキッコはまるで神さまに仕組まれたかのように、お互いをもっと知ることになりました。
そして、これは偶然ではなく必然だったのでしょうね、佳那瑠と悠太も含めて、私たち4人はオフィスに集結し、いろいろな騒動を通して、それぞれが青龍、玄武、白虎、朱雀の四神の末裔であると知ることになったのです。
そして遊び半分で四神倶楽部なるものを結成させたところ、それに満を持したかのように妹の魔鈴が現れ、グリーンスターへの旅へと招待してくれました。
そこでいろいろなことを見聞したわけですが、私たちの兄弟姉妹たちの四神倶楽部と同盟を結ぶこととなりました。
さらにそこで啓発され、四神倶楽部のミッションを、日本を守ることと私たちは決めました。
そして、その初プロジェクトは、土蜘蛛星人の女王蜘蛛をやっつけるというものでした。
本当に手強い相手だったわけですが、グリーンスターの四神倶楽部の協力を得て、お陰様でうまくいきました。
なにぶん初仕事でもありましたので、『四神倶楽部物語』として、ここに紹介させてもらいました。
これからも影ながらとなりますが、しっかりとミッションを遂行して行くつもりです。
そして、皆さまの心の片隅で結構ございます。
日本のどこかで……、いや皆さまのすぐそばにいるかも知れません。
私たち4人が日本を守るために、秘密裏に活動をしていることを、どうかお見知りおきのほどよろしくお願い致します。
ということで、ここでこの物語を終えたいのですが、実は後日談がありまして……。
お礼と報告を兼ねて、四神倶楽部の土蜘蛛星人の女王退治の打ち上げ会を催し、その宴席に五神の麒麟のオッチャンを招待させてもらいました。
その時、このオヤジが明かしたのです、「ワシの俗名は――槇澤良樹じゃ!」と。
これにはホント、心臓が飛び出しそうになりました。
四神の縁が繋がり、そして集結し、ここに至ったわけですが、ひょっとすれば、これらのすべては槇澤良樹、いや五神の麒麟さまによって仕組まれたことだったのではないかと最近思うのですが……。
まっ、いずれにしても、ここまで読んで頂き、まことにありがとうございました。
四神倶楽部 リーダー 高瀬川龍斗より
四神倶楽部物語 鮎風遊 @yuuayukaze
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます