第14話 援助の約束
初めてのミッション遂行、それは土蜘蛛星人の女王蜘蛛をこの世から葬り去ること。私たちはそう決意したのですが、具体的な手段をそう易々と思い付きません。
富士山麓にある青木ヶ原樹海、そこに三つの洞窟があり、それらを結んだ三角形の中心に未だ知られていない百鬼洞穴があります。そして、その地底深くに土蜘蛛星人の女王蜘蛛が潜んでいます。
なぜこの女王蜘蛛はそんなところにいるのでしょうか?
その魂胆はわかってます。富士山の地底10キロメートルの所に、大きなマグマ溜まりが存在することが魔界王解析システムによりわかりました。
そもそも日本列島は太平洋プレートが列島下へと潜り込み、地底には多量のマグマがあります。そしてその活動の結果として、北海道から浅間山、八ヶ岳、富士山、伊豆七島、硫黄島へと抜ける火山弧を形成しています。その中で最も大きな複成火山が富士山なのです。
1707年、マグニチュード8.4の宝永東海地震が発生しました。それが引き金となり、その49日後に富士山の宝永大噴火が起こったのです。
その噴火の影響は甚大で、横浜で10センチメートルの火山灰が積もり、また江戸においても、昼間でも暗く
それから約300年の月日が経ちました。富士山の地底には相当量のマグマが堆積し、高圧状態となっていると充分推測されます。
土蜘蛛星人の女王蜘蛛はそこへと穴を掘り進め、そこから一気に圧を抜き、すなわち噴火をさせようとしています。そして、この大噴火により日本を騒乱状態に落とし入れ、それに乗じて世の中を支配しようという謀略なのです。
そんな極悪非道を企む女王蜘蛛、深い穴から外へと引きずり出し成敗したい。しかし、一体どのようにして
穴から出てきた時に、一刀両断にする。それを断行するにしても相手は強過ぎます。
それともいっそ爆薬を穴に仕掛けて、ドーンとやるか?
しかし、それはあまりにも危険過ぎます。なぜなら誘拐された幼稚園児や若きリーダーの坂本氏が地底のどこかにいる可能性があります。また頑強な兵士蜘蛛が多くいて、何をしでかしてくるかわかりません。
私たちはミッション遂行の意志はあるのですが、妙案がなくほとほと困り果てました。そんな時に、ミッキッコがタイミング良くサジェスチョンをしてくれました。
「ねえ龍斗、私たちの守り神の麒麟さんに訊いてみない」
私はこれを聞いてポンと手を打ちました。
私はすぐに、「そうだ、みんな、守り玉を持って集まってくれ」と声を掛けました。他の佳那瑠も悠太も、今から何を始めようとしてるのか察知しました。
早速、それぞれが守り玉を握り締め、前へと突きだし重ね合わせました。するとどうでしょうか、即座に麒麟さんが現れ出てきてくれたのです。そして、私は単刀直入に訊きました。
「麒麟さん、御指導して下さい。どんな方法で、土蜘蛛星人の女王を退治したら良いのでしょうか?」
麒麟さんはそれに対し、待ってましたとばかりに、「あんなあ、それ、簡単なこっちゃ。まず蜘蛛の巣で絡め捕りなはれ。へてから女王蜘蛛を水の底になあ、めっちゃ沈めたったらええんやで」と。
私たちはこれを聞いて、ズルッとズッコケてしまいましたよ。その原因は麒麟さんが教示してくれた内容、それではなく、麒麟さんから初めて聞いたその語り口調に、そう、そのコテコテの関西弁にです。
守り神ですから、もう少し格調高い言葉使いかと思ってたのですが、まるで大阪のオッチャンですがな。
そんな想定外の拍子抜けから立ち直るのに少し時間が掛かりましたが、気を引き締め直して、再度内容について「蜘蛛を蜘蛛の巣で絡め捕ることなんて、できるのですか?」と確認しました。
「そやで、あいつらはなあ、蜘蛛でも土蜘蛛やから、蜘蛛の糸に馴染みがないんや。うまいことやんなはれや。ほな、さいなら!」
守り神の麒麟さんはそう告げて、そそくさと消えて行ってしまいました。それにしても、ホント逃げ足の速い守り神さまでした。
しかし、私たちは麒麟さんが残していってくれた言葉からヒントを得て、土蜘蛛星人の親分、そう女王蜘蛛の抹殺計画をその日の内に練り上げました。
園児たちは薄暗い洞窟内に捕獲されているでしょう、そのため時間の猶予はありません。少なくともここ1週間内で退治してしまう必要があります。
また実行するためには、急ぎ休暇を取らなければなりません。私たちは日本を守るために、職を辞することもここに覚悟しました。退職願をポケットに入れ、部長に私事都合による休暇申請しました。
これに対し、深い事情があるのだろう、あとのことはどうするか、それは休暇が明けてからもう一度話し合おう、と部長が言ってくれました。
さらに、私たちは今すぐに手掛けなければならないことがありました。
それは、女王蜘蛛退治のためにいろいろな道具や機材が必要、その段取りです。だが、それらは地球にあるものではありません。私たちはグリーンスターの四神同盟の魔鈴たちに依頼しました。
四神同盟を交わしたお陰です。彼女たちは快諾してくれて、宇宙貫通カプセルの特急便で送ると言ってくれました。そして明日の午後にはカプセルごと、三つの洞窟が作る三角形の外側、つまりそこは幾分安全で、そこへ運んでおくと約束してくれました。
またカプセルは、私たちみんながそれぞれの守り玉を持って囲まない限り決して開かない、また他のなに人も開けることはできないと説明してくれました。
その上に、私たちが頼んだ一番大きなもの、その部材は到着に少し時間が必要。そして、その組み立てに魔鈴自身が応援に行くとまで言ってくれました。
他に、私たちの安全を心配し、現地に入ったらすぐに結界を張らないと危ないよ、と忠告もしてくれました。
私たちはこれらの援助の約束や助言を受け、大変有り難く、ただただ感謝でした。
このようにして、翌日から本格的な行動開始となったわけです。
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