第7話 紀行3日目 魔神村

 朝10時過ぎに、魔鈴が自家用小型天車てんしゃで迎えにきてくれました。

 魔鈴は龍斗、つまり私の妹だと名乗ってます。そのためか本日は私が生まれた所、そして幼い時に暮らしていた場所に連れて行ってくれるというのです。

 本当だろうかと眉唾ものですが、私は一応信じて……、というか、折角ですから兄の振りをして、ミッキッコと佳那瑠、そして悠太とともに行くことにしました。


 乗車した魔鈴の自家用小型天車、それは確かに車のようなものでした。ただ違うのは空中を自在に飛び、進むことができるのです。

「お兄さん、それとみなさん、グッドモーニング。さあ出掛けるとしましょう」

 魔鈴は元気な声で挨拶をして、私たちを天車へと招き乗せてくれました。そしてサアーという軽快音を発し飛び立たせました。窓から外を眺めてみますと、一杯の天車が飛んでます。

「魔鈴、なんか行き来が頻繁で、デタラメのようだけど、よくぶつからずに上下左右にヒューヒューと飛べるもんだね」

 私は交通事故が心配で、無遠慮にそんなことを訊いてしまいました。


「あらっ、お兄さん、ここの画面を見てちょうだい。空間には何もないように見えてるけど、このスクリーンに映ってるでしょ、ちゃんとした空中回廊があるのよ。ほら、信号まで備わってるわ。だから絶体にぶつからないから、安心して」

 私は魔鈴に言われるままに画面を覗いてみますと、高速道路がX軸、Y軸、そしてZ軸に、つまり上下左右の四方八方によじれながらも伸びていってます。なるほどと納得して、昨日までの見聞で、みんなにもいろいろと疑問があるのでしょう、これを切っ掛けとして、まず佳那瑠が質問の口火を切りました。

「ねえ魔鈴さん、この星の動物って、ロボットのアニマノイドしかいないの?」


 私も同じような疑問があり、魔鈴からの答を待ちました。魔鈴はなんでも話しますよと、その心構えなのか少しの間を取り、おもむろに……。

「ううん、ホントの動物は自然地区に行けば一杯いるわ。昨日通ったでしょ、あそこは周りに電子鉄線が張られた限られた地区でね、アニマノイドだけが放たれてるの。そう、人工動物ワールドと言ってね、自然地区からは分かれてるわ」

 魔鈴のこんな話しにさらなる疑問が湧き、悠太も小首を傾げます。

「それにしても自然動物と人工動物は別々な所にいるんだ。なぜ、そんなことになってるのですか?」

「だって、緑星人みどりせいじんにとってこのグリーンスターは、掛け替えのない星ですもの。ずっと昔のことだけど、みんな地表で暮らしていたのよ。それで星の自然が荒廃してしまってね、動物たちも絶滅の危機に陥ったわ。その時初めてね、そのあやまちにみんなが気付いたのよ」


「それって、魔鈴さん、今の地球のようだわ。それで、みんな何に気付いたの?」

 佳那瑠がこの話題に興味があるのか、横槍を入れてきました。

「それはね、佳那瑠さん、地表面だけでも、すべて自然のあるがままに任せようとなってね。緑星人が立ち入れるエリアを自ら制限したの」

「ふうん、それでなのね、緑星人が地底世界に住むようになったのは」

 佳那瑠はさすが頭の回転が速く、すべてを理解したようです。それにミッキッコは細長い指を頬につけて、ちょっと可愛い仕草で、「だけど、昨日のように地表上の行き来も必要だし、子供も大人も太陽の下で遊びたいわよね。だからなのかしら、一部の区域だけを開放してるのは」と。


「そうよ、ミッキッコさん、動物たちがたくさん住んでる自然地区は、立ち入りの制限をきつくして、完全に自然の摂理にゆだねてあるのよ。つまり自然の為すがままにしたの。その代わりにね、だって地表に出て、本当の日光を浴びたり、大自然に触れたいでしょ。だけど、それだけじゃ面白くない、だからありとあらゆるアニマノイドを放ってね、人工動物たちのワールドとしてあるのよ」

 私は「それでなのか、ヤツらは親愛の情を込めて、全部と笑ってたのは」と昨日の虎やティラノサウルスのティッチンを思い出しました。


 魔鈴はこれを察してか、私の方をちらりと見て、「お兄さん、あの子たち可愛かったでしょ。だけど時々だけど、電子鉄線を乗り越えて本物のライオンが侵入したりもするのよ。それって危ないでしょ、だからすぐ本物かどうか見きわめできるように、アニマノイドにはすべてグリーンアイズになってもらってるのよ」と。


 ここまでの魔鈴の話しに、私たち4人はインスパイアされたかのように、緑星人たちの生き方が理解できました。つまりそれは、グリーンスターという小さな星を守るために自ら地底へと潜ったということでした。

 緑星人て、立派! と感心するばかりだったかな。


 そんな時に魔鈴から「さっ、着きましたよ」と声が掛かり、言われるままに天車から降り、その後を付いて行くと、「このエレベーターに乗って、地表へと昇りましょ、そこがお兄さんたちの生まれ故郷でもあり、幼少の頃、みなさんが過ごした所なんですよ」と話してくれるじゃありませんか。


 これに私たち全員は――「えっ?」。

 魔鈴が唐突に言い放った、、それに言葉を詰まらせました。そして悠太は一拍おいて、「えっえー、魔鈴さん、幼少の頃、みなさんがって……、俺らも、ってこと? これから訪ねる故郷ってのは、あなたのお兄さんの、龍斗さんだけの場所じゃなかったの?」と顔に緊迫感が走り、若干引きつってます。


 だが魔鈴はすぐにはこれに答えず、私たちをエレベーターへと誘導し、地表というボタンを押しながら話してくれました。

「そうですよ。だってこの旅行の前に、みなさんも同じようにグリーンスターで生まれたのよと、もし言ってたなら、蜂の巣を突っついたようになっていたでしょ。だから、申し訳なかったのですが、龍斗お兄さんだけにしておいたの。まあ、あとでわかりますから」


 しかし、ミッキッコと佳那瑠は最初から何かを感じていたのか、これをチャンスに自分たちの出生の謎を解き明かしたいのだろう、特にここまでの話しでは驚いてはいませんでした。

「もう覚悟を決めなさいよ、男の子でしょ」

 悠太は反対に佳那瑠から喝を入れられてました。エレベーターはそんなちょっとハラハラドキドキの中で、まことにスムーズに、約500メーターは上昇したでしょうか、地表へと着きました。

「さあ、みなさん、ここですよ、行きましょう」


 魔鈴が案内するままに地表に出てみると、空は赤や青に輝き揺らいでいます。さらに辺りを眺めてみますと、前に大きな海が横たわっていました。その水平線のやや上方には太陽が緑に輝き、まさにこれが本物のグリーン・フラッシュなのでしょう、緑の閃光の世界が左から右へと幅広く広がっていました。

 そして信じられないことだったのですが、私たちが立っている場所、それは明らかに、海に鋭く突き出た岬の先端だったのです。


「魔鈴、ここは何て言う所なの?」

 私は、なぜこんな所にと考えを巡らせながらも訊きました。

 魔鈴は「お兄さん、もうそろそろ思い出してよね。ここは魔神岬よ」と不服そうでした。それに対し、横にいた佳那瑠が指を差して、「あららららっ、私、思い出してきたわ。あっちの方に魔神村という村があったでしょ。ねえ、ねえ、ミッキッコちゃん、あそこで一緒に遊んだわよね」と。

 これにミッキッコが「ああ、そうだわ、私も思い出してきたわ」と一所懸命に頭を巡らせているようでした。


 こんな二人の様子を見た魔鈴は、嬉しそうに、「佳那瑠さんにミッキッコさん、思い出してくれて、ありがとう」と礼を述べ、「お兄さんも悠太さんも、……、まだ?」と私を睨んできました。

「それがまだなんだよなあ」

 私はそうとしか返答のしようがありません。

「じゃあ、村の集会場へ行きましょう」

 魔鈴はツンと澄まして、前をさっさと歩き始めるじゃありませんか。私たち4人はトコトコとあとを付いて行くしかなく、そして辿り着いた所、それは魔神村の中央にある建物でした。

 そこにはと看板が掛かってはいましたが、赤い尖り屋根で実にモダン。魔神岬にある洋風のやかた、その情景は一幅の絵のようでした。


 魔鈴は入口の厚みのあるドアーをギーっと押し込んで、「さっ、どうぞ」と。

 その誘いに従って入りますと、入り口近くに小さな前室があり、そこを通ると大きなフロアーとなっていました。

 天井からは豪華なシャンゼリゼが吊り下がり、奥には大理石造りの階段が二階へと。その下には大きな振り子の置き時計がありました。

 その時です、ちょうど時間となったのでしょう、突然時計盤の小窓が開き、カッコウではなく始祖鳥が飛び出してきて、甲高くピーピーと鳴いたのです。これがなんとなく滑稽で、笑わずにはおられませんでした。


 しかし、こんな鳴き声、なんとなく聞いたことあるなあと思い、興味で時計の方へと。時計盤に目を凝らすと、制作・紀元前2,432年との刻印が読めました。

 確かにこの年代にびっくりはびっくりなのですが、私たちはもうこれくらいのことでは驚かなくなっていました。


 それからのことです、「さあ、ランチタイムよ」と魔鈴から誘われ、用意していてくれていたシーラカンス・ペスカトーレ・ランチを雑談しながらみんなで頂きました。

 これで一段落して、嬉しいかな魔鈴が香りの良いコーヒーを、まるで私たちが国賓のごとくサーブしてくれたのです。

「さっ、みなさま、ランチも取られ、ごゆっくりされたと思いますので、ちょっと紹介したい人たちがいます」

 私たちは「へえ、何事かな?」と首を伸ばしていますと、隣の部屋から二人の男性と一人の女性がツカツカと入ってくるじゃありませんか。そして私たちのテーブルの前に進みきて並んで立ちました。


「じゃあ、みなさまに、この方々を御紹介させてもらいます」

 魔鈴は私たちにそう告げて、一気にあとを続けます。

「こちらがミッキッコさんのお兄さんの貴虎きとらさんです。そしてこちらにおられるのが佳那瑠さんの弟さんで、鳳飛ほうひさんよ。それとこちらが悠太さんのお姉さんなのよ。華武はなぶさんと申されます」

 私たちはこれを耳にして、腰が抜けるほど驚きました。今にも椅子から転げ落ちそうに。


 確かにですよ、魔鈴は私の妹だと告白しました。だけど今、ミッキッコに佳那瑠、そして悠太、私以外の3人にも兄弟姉妹がいるのだと言うのです。全員、しばらく言葉が出てきません。目を丸くして、カチンと身体が固まってしまいました。

「みんな良かったよ。妹がいたのは俺だけじゃなくって。ここまで出掛けてきた甲斐があったってことだよ」

 私はそんな言葉しか掛けられませんでした。


 しかし、魔鈴は落ち着いた口調で、さらに「私たちは四神民族の末裔です。もう親たちはどこかの星へと消えて行きましたけど。お兄さんたちは幼い頃に地球に派遣され、この時まで生きてきたのよ。そして、お兄さんたちは必然のごとく一つのオフィスに集合し、地球で四神倶楽部を発足させたのですよね。これは運命なのでしょう、だからこうして私たちの兄弟姉妹は再会をさせてもらいました。だからもうお兄さんたちも──目覚めてちょうだい」と。

 最後に、目覚めてちょうだいと言い切った魔鈴の目は真剣そのものでした。私たちはそこに意味深い何かを感じ始めたわけですが、まだよく理解できません。


「魔鈴さん、私たちって、何に目覚めたらいいのかしら?」

 ミッキッコも同じ疑問を持っていたのでしょう、いつもとは違う真摯しんしな眼差しで尋ねました。それに魔鈴と他の3人、つまり先ほど紹介してもらった貴虎、鳳飛、華部が優しく微笑み返してきてくれました。

 そして私と同年配の、自称ミッキッコの兄だという貴虎が少し強い口調で、「龍斗さんたちも、我々が宿命として背負っている、それに早く目覚めて欲しいのですよ」と。


 悠太も今はマジそのものです。

「我々が背負ってるミッションて? 確かに最近何かを感じるのですが、正直なところ、それって何なのですか?」と顔を思い切り前へと突き出します。

 それに今度は悠太の姉と名乗る華武が「私たちはね、縁あって、このグリーンスターに住み、親からの四神倶楽部を引き継いだのよ。そして使命は、この星、いや、そんなに大袈裟でなくとも、未来に向けて、この緑星を守っていく。そんなミッションなのよ。だから悠太たちも同じようにと思ってね」と、まるで可愛い弟を諭すように話すのです。

 私たちはただふんふんと頷くしかありませんでした。


 だけど話題がちょっとカッコ良すぎて、「それって、砕いて言えば、世直しをしていくってこと?」と言葉をわかり易く変えて確認しました。

 すると華武は、他の3人の表情を確認しながら、「その通りかもね。緑星を守っていくということを、もっとわかり易く考えれば、四神倶楽部のミッションは──世直しだわ」と深く頷き、同意してくれました。


 魔鈴はこれを援護するかのように、私たちをひたむきな眼差しで見据えて、さらにアドバイスしてくれました。

「お兄さんたちも日本で四神倶楽部を発足させたのでしょ、烏滸おこがましいことを言うようだけど、できたらこのようなミッションを打ち立てられたらどうかなと思うのよ。そして、これから先、私たちの四神倶楽部と共に歩んでもらえたらいいなあってことよ」と。


 私とミッキッコ、そして佳那瑠に悠太、この4人はお遊びで四神倶楽部を発足させました。そして夏期休暇前のある日、私の妹と名乗る魔鈴が現れて、グリーンスターへ来て下さい、と誘いがありました。それに調子に乗って、というか、宇宙旅行の千載一遇のチャンスと思い、4人は慰安旅行として遊びにきました。

 それなのにですよ、こんな話しを重々しく聞かされて、また四神倶楽部のあり方まで講釈されたのですから、ちょっとうんざりですよね。


 だけど、それを言うのも失礼であり、私はどうしたら良いものなのかわからなくなりました。

 されども一応リーダーです。ここへ招かれてお世話になっている以上、私たちの四神倶楽部として、何らかの返答をするのが礼儀かと思いました。

「魔鈴さんに、それにみなさん、私たち日本の四神倶楽部、それへの貴重な助言を頂きありがとうございます。だけど倶楽部は元々遊びで始めたこと、そこまでいきなり目指すものを高めよと言われても、正直イメージがもう一つ湧きません。だからそちらの四神倶楽部の日常の活動を、ちょっと見聞させて欲しいのですが、いかがなものでしょうか?」

 私がこんなちょっと慇懃いんぎんな言い回しで頼んでみました。ミッキッコたちの3人も同じ考えなのでしょう、特にそれへの言葉を挟まず、その通りですと後押しをしてくれました。


「お兄さん、そらそうだわね。現実の活動もわからず、これからどうするかは決められないわよね。じゃあ、ちょっとここの地下に案内するわ、付いてきてちょうだい」

 魔鈴たちは私たちのこんな心境を理解してくれたようで、手招きし、奥の部屋へと連れて行ってくれました。そして階段を降り、全員地下室へと潜り込んだわけです。


「あっ!」

 まったくもっての驚きです。私たちがそこで目にしたものは、この古典的な洋風の建物からは想像も付かない超未来的なものでした。

 壁には大きなスクリーンがあり、宇宙全体の画像が順次変わりながら映し出されています。そして10数台のデスクトップのパソコンが並んでいました。また横の部屋では大型高速コンピューターなのでしょう、シー、シーと軽やかな音を発し、作動していました。


「ここがグリーンスターの、四神倶楽部の秘密基地よ」

 魔鈴はそう口にして、パソコンを叩きました。するとどうでしょうか、地下都市の銀行のATMで現金を引き出そうとする覆面男がいきなり映し出されました。それを即座に解析ソフトに処理させたのでしょうか、瞬時にその男の氏名や履歴などが割り出されたのです。


「例えばね、今、この盗難事件が起ころうとしてるでしょ。この星を守るために、こそっとこの情報を当局に流すのよ」

 魔鈴が楽しそうに話します。

「だったら魔鈴さん、当局の方で、このような解析能力を上げればいいじゃん」

 悠太はこういう分野が好きで得意なんでしょう、首を突っ込み始めました。

「グリーンスターには、まだここまでの能力はないわ。それにね、私たちは周りに絶体侵入できないバリアーを張ってあってね、緑星人はこの情報元に入ってこれないの」

「へえ、そうなのか。これ、欲しいなあ」

 悠太が感心して、ついつい本音を出してしまいました。それに魔鈴は意外にもあっさりと、「このバリアー付き魔界王解析システムのソフト、必要ならすっかりコピーして、持ってってくれてもいいのよ」と言葉を繋げました。


 これを耳にした悠太はもう舞い上がってしまいました。そして、じっと私の方を見て、「どうしようか?」と目で尋ねてくるじゃありませんか。

 そんな暗黙のやり取りを魔鈴は素早く見て取ったのか、「それにね、宇宙検索エンジンのアプリーケーション・ソフトも全部差し上げるわ。これはね、四神民族だけが持ってるものなの。宇宙や魔界のすべての情報が入ってるわ」と、さらに魔界含みのことを話すものですから、今度は佳那瑠に火が点きました。

「えっ、私、それ欲しい!」

 佳那瑠はまたまた、まったくの真っ直ぐです。それに応じるかのように、魔鈴は引き出しから1枚のCDを取り出しました。そして、「はい、どうぞ」と佳那瑠に手渡しました。それから、「佳那瑠さん、これ、みなさんのパソにインストールしてみて。宇宙検索エンジン・四神王にアクセスできるわよ」と、とにかく魔鈴の言葉は力強かったです。


 それにしても佳那瑠はよほど嬉しかったのでしょう、手を震わせながら受け取った1枚のCDを胸の谷間へとそっと包み込みました。そのあとは、ただただ沈黙しやがんの。

 多分嬉し過ぎて、お礼の言葉も出てこなかったのでしょうね。それを察してかミッキッコが「魔鈴さん、ありがとう。これで百万馬力のパワーを頂いたわ。でも、なぜこんなにまでも私たちにしてくださるの?」と、幼友達が言いたかったことをフォローします。


 それを横で聞いていた、ミッキッコの兄と名乗る貴虎が、こんな妹を気遣ってのことなのでしょうか、優しい口調で、「それはね、青龍、白虎、朱雀、玄武、それぞれの民族が結集した四神倶楽部、それがやっと地球の日本で発足したんだよね。これからは何らかの形で世の中にもっと関わっていく。そうだよ、そういう宿命を受け容れて行く、そんな時期がきたということなんだよ」と。


 こんな話しを聞かされて、黙り込んでしまった私たちに魔鈴が気遣って、優しく微笑みかけてくれました。

「みなさん、どうするかの結論は、帰る時に聞かせてもらったらいいから。だけど、折角の機会だから、私たちの活動をしっかり見ていって欲しいの」

 確かにそうかも知れません。私は「そうさせてもらうよ」と結論付けました。そして、それと同時に、今回の私たちの慰安旅行、魔鈴がそれに期待していた全貌が見えてきたような気がしました。


 しかし、心の動きは可笑しなもの。横にいた悠太が「えっ、この旅って、研修旅行だったのか?」と言わなくてもよいことを思わず吐いてしまい、あとはムッと。

 その感情の機微を魔鈴はすぐに感じ取ってくれたのか、「ゴメン、ゴメン、みなさん。そうだわね、堅いお話しはこの辺までにして、かってみなさんが遊んだ村へと案内しますわ」と頭を下げてくれるじゃありませんか。

 これはちょっとまずい。私は先輩として悠太を睨み付けました。そしてリーダーとして、「どうも悠太の言葉が過ぎたようで、だけど、ちょっと気分転換させて欲しいのですが」と陳謝しました。

 それから今は魔鈴の親切な提案、帰る時に我がチームの今後を伝える、これに同意いたしました。


 このようにして、私たちは魔鈴たちの善意に救われ、あとは魔神村で1日を楽しみました。そして、そこでは遠い過去を思い出したのです。

 私たちの四神倶楽部の4人と、グリーンスターの四神倶楽部の4人は、確かに兄弟姉妹であると。

 このように第3日目に得たものは多く、みんな充実した気持ち一杯で、地底都市にあるホテルへと戻ってきました。


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