横林大（『バケツズ』より）

　理数的な言葉の表現と、シンプルな言葉の表し様が対比的で面白いと感じました。 〈ｉ×ｉ×ｉ×ｉ＝1人でももう生きていけるよ〉 〈匂い立つ母校の庭のあじさいに涙としてのK⁺（カリウ…続きを読む

　怪獣というものを想起する際、私は幼少のノスタルジーを思い出す。ゴジラやウルトラマンなど人間とは程遠い姿形や大きさを成す、あの頃の怪獣たち。それらは街などを蹂躙する恐ろしい存在でも…続きを読む

　まず、十作すべてに目を通して思ったのが、その多様さ。題材から、表現から、着地の仕方から十首十様という感じがあって、一首一首を噛み締めるみたいに眺めてしまいました。 　デスゲームと…続きを読む

〈発疹は楽しい　くしゃみも楽しいよ　通販ばかりの夜のさなかに〉 　この短歌を拝見した際に、なんて底抜けな明るさなのかと驚かされました。”発疹”も”くしゃみ”も”通販ばかりの夜”も陰…続きを読む

　言葉の装飾がSFやファンタジーを経由しているような装甲の具合で、その一つひとつが『カクヨム』というサイトへ掲載する短歌として映える印象を持ちました。 　けれど、詠まれている内容…続きを読む

　例えば恋は、相手を理解しよう、理解していきたいと考えることに喜びや嬉しさが募りますが、今回の杉山さんの作品はまさにそのような気持ちになるような短歌に溢れていました。 　 　自分に…続きを読む

　言葉の飛距離がどこまでも遠い場所へ向かえる作風に憧れます。詩であれ小説であれ短歌であれ、ありそうでなかった組み合わせや、よく見れば心地よい違和を抱いてしまうような羅列など、言葉の…続きを読む

　短歌とは三十一という限られた文字数の中でどれだけの表現ができるかを昇華していくものだと思うのですが、サ行さんの短歌はその枠の自由さが、とても軽やかで良い。驚きと共に「いいなあ。」…続きを読む

　色彩と食材が言葉の味わいを整えて、そこにないはずの喫茶店がはっきりと見えてきました。青と白。黒と白。緑と白。白と白。そして最後を締める朱夏。それらの色が表現するものがメニューとい…続きを読む

　短歌を始めてから様々な方の連作を見る機会も増えたのですが、写実的でかつ生活のあるあるや切実さがここまで垣間見える作品群には初めて出会いました。作者の視点の鋭さや中間管理職二歩手前…続きを読む

　ああ、この方は言葉を巧みに使うなあ、と初めに見たときは感心しました。短歌はわずか三十一字で表現する作品群です。三十一字は時として何も工夫をせず、そのまま羅列するだけでは起伏のない…続きを読む

　詩の世界は、思い描いた人の数だけ様々な情景、様々な解釈が浮かぶところに良さがあると感じます。その点で今回の『思いを丈を載せる詩』という連作は作者の徒然なる思いを、頭の中で咀嚼し、…続きを読む

　この文字数の中、一作品一作品に奥行きを感じました。最近短歌を作るようになったのですが、三十一字よりも足りない十七字。そんな十七ぽっちとは思えない秋色の表情、秋づく様相。十七文字が…続きを読む

　四季の折々を我々は日常生活の中から見て聞いて味わうことで感じるわけですが、短歌は、それらを三十一字に切り取ることができます。殊更、様々な自然の表現の様は、写真よりも写実的で風景に…続きを読む

　人が恐怖を感じる瞬間は様々あると思うのですが、未知のもの、それも自分の理解預かり知らぬものの存在に触れた瞬間の恐怖は測れないものがあると思います。今回拝見した作品では短歌でそのよ…続きを読む

　生活には困らないけれど何か充されない。そのような想いが育ちや関係の中で熟成され、望郷とコンプレックスへ変容していく。まちの風景は間違いなく暮らしていた人たちの心には残っていて、ニ…続きを読む

　表題がいい。恋なんてそんなものじゃないかとも思わされるし、恋があることで『あなたが好きな私』を好きな、あなたの存在や誰かの存在も生まれるかもしれないと短歌を全て詠み終え考えました…続きを読む

　初めは少しおどろおどろしく、ホラーが苦手な私は読むのを躊躇ってしまったのですが、読み進めているうちに寓話的な展開から、出会いと別れが描かれており、その様は異様なもの故の哀愁や情動…続きを読む

　内面を作品として言葉に変える時、その切実さをどのような美辞麗句、どのような言葉で表現するのが良いのか、という判断を脳内で行うと思うのですが、今回の連作には伝わりやすさと感情への跳…続きを読む

　喉越しのよい、さっと読めるような短歌も多い中で、何度も反芻しながら言葉をほぐすことで広がる作品が多い印象でした。初めのうちは「どういうことだろう。」と考えながらも、自分の脳内と作…続きを読む

　連作の良さは、その三十一字に滲む行間に想いを馳せることができる部分だと思うのですが、この短歌の連なりは、届かないことを二転三転頭の中で転がしながらも、絶望と希望を往復する様子が切…続きを読む

　生々しい言語表現が胸に刺さるようでした。人は、どうしようもなさを抱えながら生きていくものですが、その折り合いはわだかまりとして心の中に泥のごとく沈んでいく。けれど、短歌が救いだと…続きを読む

　どの作品も読み手に痛みが伴うような作品だと感じました。 　初めの一首では”名前がいる”と痛みを仮名で”熱”にし、終わりの一首では痛みを”仮病”と名づける。そして工程に至る作品の一…続きを読む

　静かな冬の中に情熱のように燃える想いが見え隠れするのが非常に良いと感じました。寒さや仄暗さが纏う冬という季節の、そこから見える雪や透明なものたち、そして染み入るような音と優しさ。…続きを読む

　体毛という表題に惹かれて読み進めました。 　淡々とした表現の中に作者様の鋭さと柔らかさを兼ね備えた視点がつぶさに散りばめられていて、とても楽しく拝見しました。『芝刈り機〜』という…続きを読む

　キャッチコピーの作品に惹かれて読み進めました。 　当作品群は、どれも淡麗な言葉で綴られており、一首一首読むたびに個人の感情と世界を対比する手腕に素晴らしさを感じました。 　また、…続きを読む

　夏の情景を描いた連作は、ドラゴン花火やららぽーと、オロナミンCと固有名詞の使い方が印象的かつ面白かったです。この作者様は言葉の挟み方が非常に巧みで、特にTOYOSUを使った短歌は…続きを読む

　一首一首に植物や生き物への温かい視点が含まれており、本当に作者様のお家の庭を紹介してもらったような気分になりました。 　第一首の美しく角張った表現から、第二首のゆるやかな柔らか…続きを読む

　夏の連作は、明るさも仄暗さも恋愛の高揚感も描かれ、夏の群像のような見応えがありました。 　『夏がきた〜』の一首目から夏の情景がぐんと広がる感覚。 　『貝がらの〜』『ひまわりが〜…続きを読む

初めはとても静かでどこか不穏な作品が多く、惹きつけられている間に戦争という規模感と平和を願う切実さの両輪に心が突き動かされる。 作品は一見独立しているように見えて地続きである。そ…続きを読む