激しい決意が感じられるような短歌で始まり、その歌の美しさの余韻を長引かせるように静かな美しさを内包している短歌が次々と並んでいます。クスッと笑ってしまうような短歌、ある一面をスパッと切り取ってしまったような鋭い短歌、日常を穏やかに描いた短歌……地続きの十五首でここまで様々な世界観を楽しめるのは、きっとこの短歌集だけです。ぜひご一読ください!ちなみに私のイチオシ短歌はこちらです。《春の陽を煮詰めたような蜂蜜よ英霊なんてなってたまるか》
初めはとても静かでどこか不穏な作品が多く、惹きつけられている間に戦争という規模感と平和を願う切実さの両輪に心が突き動かされる。作品は一見独立しているように見えて地続きである。そして美麗な言葉の中には、切実な思いが滲んでいる。三十一の自由さと物語性が感じられる作品群。おすすめである。
言葉の色が食い込むような歌があったり、平和で優しい言葉で戦争を現してまるで言葉でシーソーしているような歌があったり、制約があるのが短歌なのに、自由な動きを感じる。単純な戦争と平和の対比ではなく、戦争の不穏にいくらか影響を受けているような平和の側の歌も、ニュースで一抹の不安を覚える心情を拾って貰えているようで良かった。
この作者さんの鋭く切れる一面や穏やかな瞬間を優しく切り取った作品や今、世の中で起きていることを日々の中で、忘れそうになる瞬間を思い出させてくれる優れた31文字の集まりです。忘れそうなこと忘れてはいけないこと忘れたくないこと見なくてはいけないのに、見ていないこと見たくなくても見なくてはいけないこと見たいことそのようなことを確認させてもらえた気がします。
蝶と頸動脈と言う二つの言葉の対比が鮮烈かつ生の息吹を感じました。