色彩と食材が言葉の味わいを整えて、そこにないはずの喫茶店がはっきりと見えてきました。青と白。黒と白。緑と白。白と白。そして最後を締める朱夏。それらの色が表現するものがメニューという仕掛けも面白い。白と白でホットミルクを表現するのは趣深いです。【クラブハウスサンド〜】から始まる一首は、読んだだけでその商品を注文したくなるよう。
また、喫茶店というのは人と人とが交わる場であり、オムニバス形式のようにその様子が表現されているのが見事だと感じました。【緑と白〜】の作品に見られるような甘さから一転して、【いい話では〜】の一筋縄じゃなさ。この一作品ごとの一転二点が喫茶店を舞台にした群像劇を見ているようで、楽しかったです。
そしてそんな慌ただしさの中を最後の一首、【磨りガラス〜】が静かな様相で締めるのがとても良い。この連作を読んだだけで、喫茶店に行きたくなりました。おすすめです。