理数的な言葉の表現と、シンプルな言葉の表し様が対比的で面白いと感じました。
〈i×i×i×i=1人でももう生きていけるよ〉
〈匂い立つ母校の庭のあじさいに涙としてのK⁺(カリウムイオン)〉
短歌という文学の色合いが強いものの中で、数式や元素記号を使う。他の作品で言えば、煙、炎、髪の色の黒、とどこか化学の匂いがするように感じられます。単作としても連作としても、良いシナジーを生み出している。
〈マチアプで会った女の手を撫でるみかんの筋をとる優しさで〉
〈小ライスおかわりでまた小ライスおかわりでまた小ライス食う〉
そんな中でシンプルな表現の作品が、上述した作品とのギャップもあって大変趣深かったです。恋という欲望が絡むと人は単純明快になってしまう。何かそんなことを突きつけられている様な飾らない言葉を楽しめました。
〈恋だとか愛だとかもうやめました冷やし中華を作ってあげたい〉
はじめるもので終わりとこれからを表現するのも素敵だなあ、と。
素敵な言葉の羅列でした。