言葉の飛距離がどこまでも遠い場所へ向かえる作風に憧れます。詩であれ小説であれ短歌であれ、ありそうでなかった組み合わせや、よく見れば心地よい違和を抱いてしまうような羅列など、言葉の選択で驚かされてしまうような作品に。
高遠さんの作品はそんな飛距離を存分に浴びることができます。例えば【黒蟻の訃報】と【電線】を組み合わせる妙。【黒蟻】と【訃報】の言葉だけでも痺れるのに、そこへ張り巡らされている電線という跳躍。その鮮やかさにやられました。
他にも【前奏】を【飼ってみたい】という上の句には、【感情】へ【相談】するというさらに突飛な下の句へ辿り着く。しかし、ここで驚くのは、そのような飛距離であるにも関わらず見たものに「ああ、何か分かるかも。」と考えさせる余地がある点。【海中の〜】や【引力は〜】で始まる作品などは一見あり得ない世界の断片のように見えるのに、なぜかあるあるの精度がひそめいている。
ただ闇雲に組み合わせる訳ではない。きちんと感覚と理論のバランス感覚は良い塩梅。そんな高坂さんの言語感覚が、ただただ素晴らしいと思える作品群でした。おすすめです。