短歌を始めてから様々な方の連作を見る機会も増えたのですが、写実的でかつ生活のあるあるや切実さがここまで垣間見える作品群には初めて出会いました。作者の視点の鋭さや中間管理職二歩手前の立場として本音を作品に作り変える力量などは、どれも素晴らしい。
【金曜日〜】で始まる短歌から働くことについて本人の心情と酒含めた他者の様子で嫌というほど伝わるし、【新採で〜】の人間やなあという感じのあるあるも、【終盤に〜】のちょっとした優しさと酔いのあるあるも、【職場いる〜】の洞察力から見えるあるあるも、その全てが適度の尺度と適度の毒で構成されている。
けれどだからこそ、そんな写実的な描写に紛れて作者の心情が垣間見える【息継ぎが〜】が際立って心に沁みます。ここに何か思いが溢れているように思えるのは、そこまでの連作を踏まえた上だったからに違いありません。
働くことは大変で、それでもきっと戦っていく。そしてそんな戦いの中で生まれた風景を2メートルの範囲で作品に仕上げる作者の、その姿勢に自分も頑張ろうという気持ちになりました。