「さまよい」を含む小説

夏枝はある屋敷でメイドの仕事をすることになった。そこには同じ年頃の美しい少女がいた。 病弱であまり外にでることのない少女、厳格な女中頭、ときおり屋敷を訪れる人。古く豪奢な屋敷には…

作家志望の男、鶴森ハルオ。旧友を亡くしたことを機に、なぜか仕事を辞めてみた。 ある日訪ねてきた見知らぬ女に、猫を差し出される。 ——「ねこ探しています　鶴森ハルオ」 誰かが勝手に…

吸血鬼に心臓を奪われると、死ぬことができなくなるという。 イルソンはある村で、吸血鬼に殺されたと思われる殺人事件に遭遇する。それはイルソンの過去の出来事を思い起こさせ、焦りを生む…

十代中頃の少女、コギトは、目が覚めたら、見知らぬ森の中にいた。森の中をさまよい、廃墟と化した、壁に囲まれた街――国を見つける。 　コギトは、そこで死にかけの男に出会い、カンテラに…

この物語は嵯峨野を訪れた一人の若者が嵯峨野を巡り歩くうちにふと紫式部の歌碑を見つけます。歩き疲れ歌碑の前のベンチでうとうとし始めます。するとその石が若者に語りかけます。 『雲隠…

　冥界の蛇神ウロボロスの館の庭の東屋で小さな声がする。 「行ッちゃダメネェ……。神様は……神様ハ……ボク達なンカ、救ってくれナイんだヨォ……」 　去年のハロウィンから、ジャックの…

　キキーー！！　突然響く車のブレーキ音。 　女の子を庇って死んだ私の前に、お迎えが現れる。 「Trick or Treat！！」 　それは死神のお手伝い、カボチャ頭の男の子の幽霊…

　沼に落ちた後、毎年、この時期、最後の瞬間を繰り返すオレの前に、不思議なカボチャ頭の男の子が現れた。 「Trick or Treat！！」 　ハロウィンの夜、陽気な男の子がオレの…

ある男はいつものように自室の布団の中で深い眠りについた。そうしていつものように目覚めたはずだった。しかしそこはいつもの見慣れた光景の部屋ではなかった。摩訶不思議なことにそこは、…

「怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない。深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ。」 ニーチェ 善悪の彼岸より もしも…

気が付くとそこは廃墟の一室。 月明りのみが照らす部屋の中に彼女はいた。 そして彼女はこの状況を理解する前に、その理解するすべを失っていることに気が付いてしまう。 ”何もかもを忘…

『西暦二〇九九年』――文明も社会も進化を止めた、『終末』後の世界。 子供たちは地下都市で、単調で無感動な毎日を送っていた。ある日、「冷凍睡眠」から目覚めたという、『前時代』を知…