「標本」を含む小説

　大正十二年、時計職人の娘・綾月時子の前に現れた一つの謎。父の遺した不思議な懐中時計と、殺人現場に残される美しい蝶の標本。 　時を永遠に留めようとする者と、時を解き放とうとする者…

　瞬く星のように、人生は儚く、そして美しい。 　生命科学研究所の研究員・葉山夜詩子の前に、突如として現れた不可思議な能力。人々の頭上に浮かぶ死期を示す数字。その能力に戸惑い、苦悩…

　記憶保管所・標本管理室。 　そこは過去の人々の大切な記憶を永遠に保存する特別な施設。 　標本管理人の春瀬時織は、ある日、異常な記憶標本を発見する。その標本の持ち主は――未来の自…

【あらすじ】 帝都の辺境領のさらに奥地でひっそりと暮らしていた辺境伯の八男ベルラン・セイレスト（十八歳）。辺境領には野生竜の群生地があり、ベルランは密猟者から野生竜を護ることを行…

この物語は、とある男が出会った魔女と芸術家との間に起きた奇妙な出来事を綴ったお話。 猟奇的だけれど愛のある、人間賛歌の物語。 ただ誰かに知ってもらいたかっただけの、多分、そういう…

「ここは夢の骨格標本を集めた博物館だ」 おじさんの手の上に乗った小さなガラスケースには、彼のかつての夢が乗せられていた。 在宅ワーカーのぼくは、彼女である芽衣子の帰りを待ってい…

北海道網走市に座するとある大学。そこに通う大学三年生の花崗冬彦は、所属先の海生哺乳類研究室の解剖室で、奇妙なアザラシの胎児を取り上げる。 人の顔をし、人の声で泣くその「人面アザラ…

ミステリー作家の加賀美聡子が殺された。発見された遺体には目立つ外傷が残されていたが、明らかに他殺であるにも関わらず、事件解決の手がかりがつかめない。苛立つ刑事のもとにもたらされた…

都会の公園で虫を捕る。ごく身近な虫に防腐剤を注射して珍しくない標本を作ることが私の趣向だ。その日は迷子の子供を見つけた。私は彼女に嘘をついた。

ナ界について私たちが知っていることは、とても乏しい。 それはあまりにも僅かな間に消え去ってしまったから。 ここに掲載したものは、すべてナ界からの声である。 小さな標本箱のなかに発…

【最新話〈星と舟と〉永遠の薄明の世界。わたしは星を目指し、小舟で進んでいく――】 掌篇・短編集。 自分だけの箱庭を創るように、美しいもの、儚いもの、おぞましいもの、悲しみ、痛み…

兎の脳内世界の録音テープ。

KAC第三回参加作品。お題「箱」 真莉、ヴィリアミ、アーベルは自然を操ることができる、ペストと呼ばれる特別な存在だ。ペストはこの世の中に生きてはならない。人間に見つかればすぐに殺…

瞼の裏の世界でそれは起こった

※過激で残虐な話となっております。 　苦手な方はご遠慮ください。 父の趣味は樹脂標本を作ることだった。 幼かった私はその美しさにすっかり魅了された。 成長してからというもの自分…

ふと視線を感じる。また描いているらしい。好奇心に駆られて覗き込んだスケッチブックに描かれていたのは……

　夏休みの間、祖母の家に預けられたユウトは、少し変わったお姉さんに出会う。 　退屈だった生活のなかで、たくさんの宝物を瓶に詰め込んでいく。

鉱石喫茶ちろり。 それは小さな町の商店街の端の端にある、街路樹に隠れた喫茶店。 珈琲の香りと鉱石の輝きに満ちたここには、人生に悩んだ人がやって来る。 それを迎えるのは、ラベルの見…

女将が美人だとの口コミに惹かれて、山の中の一軒宿「うつぼ館」を訪れた紀彦は、宿の直営施設「秘宝館」を見学する。 「特別展示室」には奇怪な虫の標本が並び、各標本にまつわる物語が語ら…

大学生二年の夏。 私は標本屋に行った。 そこで一匹の青い蝶の標本を買った。 それから私の周りに蝶による怪異が起こるようになった。