烏丸回顧録 ～リサとアラタの閉じられた世界～

年相応の女子高生・リサちゃんの、繊細ながらも逞しい視点で語られる非常に瑞々しい現代和風ファンタジーです。

――その町の子供は、成人するまで町の外には出られない。
そんな理不尽極まりない「物理的に閉ざされた」烏丸町に訪れた、年に一度の祭の日、非常に高名な刀匠の孫娘であるリサちゃんは刀を携え長い階段を上っていた。いずれ、自分と彼氏のアラタくんが、予想だにしない（というかできるわけがない）異変にまきこまれることなど知りもせずに……。

リサちゃんやその彼氏アラタくんを始めとした個性的な人々と、私たちが知ってるようで実はあんまり知らない日本神話の神様、そして道祖神ミシャグジ様が織りなす物語は、時に…続きを読む

とにかく、ころころ転がる物語です。
いや、悪い意味ではなく。
一本筋はしっかり通っていて、だけどそれが見事にどんどん転がっていきます。
読んでいる途中で、何度か「あれ！？ジャンル変わった！？」と戸惑ったくらいです(笑)
それがなんとも、面白い！！

転がるのは物語だけではなく、言葉もまた心地よく転がっていきます。
物語の題材が日本的(なにせ日本の神様や信仰が絡んでますから)なら、文章もまたとても日本を感じさせるもの。
言葉遊び。日本語遊び。そんな感じです。
でもそれだけじゃなく、それを楽しんだ上でちゃんとメッセージも受け取れる！

それぞれ弱い部分を持った、とっても「日本人」な人たちが、転が…続きを読む

刀や神様といった、我々にとって耳慣れていながらもなかなか縁遠い存在に物語を通じて触れることの出来るとても完成度の高い作品です。
登場人物たちも皆、個性派揃いで日常シーンも秀逸なのですが、個人的に特に惹かれたのは巧みな筆致で描かれる刀剣や神様、時々、妖怪等も含む伝承由来の存在に関する造詣深い描写です。
勉強になるコトしきりな一方で、「レベルが上がった！」的なコミカルなやり取りも随所にちりばめられておりますので、興味を持たれた皆様は是非一度、本作の魅力に触れてみてはいかがでしょうか！

多く含まれる現代的な語彙と、いにしえの講談話を聞くような不思議なリズム感の共存と対比が面白い。
スリリングさよりも、むしろ染み込んでくるような主題と展開が目新しい。