概要
わたしを許さないで。ひとりにしないで。
馬村ありん様の自主企画<【偽KAC20261】【お題「血」】~偽カクヨム・アニバーサリー・チャンピオンシップ 2026~>参加作品
庭石に響いた、熟した果実が落ちるような湿った音。
あの秋の日、兄さんは死んだ。わたしの身代わりになって。
それから毎年、柘榴が実る季節になると、死んだはずの兄・祥吾が現れる。
返り血のような果汁を口元に滲ませ、彼は優しく微笑む。
「気にするな」
その言葉は救いか、それとも呪いか。
頬に残る、血のように赤い痣を撫でながら、わたしは「あの日」から逃れられない。
庭石に響いた、熟した果実が落ちるような湿った音。
あの秋の日、兄さんは死んだ。わたしの身代わりになって。
それから毎年、柘榴が実る季節になると、死んだはずの兄・祥吾が現れる。
返り血のような果汁を口元に滲ませ、彼は優しく微笑む。
「気にするな」
その言葉は救いか、それとも呪いか。
頬に残る、血のように赤い痣を撫でながら、わたしは「あの日」から逃れられない。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!近親の危うい愛情関係と赤の使い方が印象的
生きる人間の証拠としての血。分かちがたく結ばれた兄妹の行く末は。
幼い頃、亜希と祥吾の兄妹は、裏庭で遊んでいた。ザクロの木から実をもいで食べ、顔を赤く汚しながら、じゃれ合っていた。そんなとき、転びそうになった亜希 をかばって祥吾が庭石に頭をぶつけてしまう。「気にするな」。そう言い残し、祥吾は帰らぬ人となるのだが……。
どことなく漂う近親相姦的なエロティシズム。亜希と祥吾が赤く口を汚しながら、お互いの肌に歯を立て合う光景は耽美的な美しさにあふれている。また、ザクロの果汁と人間の血がオーバーラップして、残酷さと美しさが際立つ。
亜希と祥吾、二人の危うい関係がどう展開していくのか……お見届け…続きを読む - ★★★ Excellent!!!兄が残した頬の口づけは不幸の刻印か?
現代ドラマとファンタジーが主戦場の猫小路葵さんの最新作。意外なことに、ダークなホラーでございました。この手の作品も書かれるんだなって思いましたが、印象的な好編でした。
ストーリーは、柘榴の木の下で事故死した兄の翔吾の亡霊を、毎年同じ日に迎える亜希の物語です。とても仲がよかった二人。亜希は、自分のせいで死んでしまった祥吾をとても気にかけていましたが、ある年、「私、来年お嫁に行くの」と兄の亡霊に告げます。そのとき祥吾は……。
柘榴の実には、確かになにか怨念めいたものが込められているイメージがあります。日本の果物って、みんなパッションがなくて、ネトーっとした、なにか籠っているイメージがあるん…続きを読む