馬村 ありん

記憶とは、なんとも曖昧なもので、時に人を悩ませるものです。 本作の主人公・倫正の抱える記憶はとても悩ましいものですが、誰しも空想的に「自分もやってたりして」などと思いを馳せたこと…続きを読む

——どんなお仕事されてるんですか？ そんな定番の質問に感じる確かな違和感。 普段自分が感じてたことを言語化してもらったかのような感慨を受けました。 はじめての床屋さんいくとまず…続きを読む

「煉獄」――主にキリスト教の教義において、死後に魂が清められるために一時的に滞在する場所を指す。苦しみや試練を象徴的に表す際にも使われる。 許嫁との結婚が決まっている「香苗」と「…続きを読む

冒頭から終わりまでこころをつかまれました。

自分の体験ではないのに、まるで自分の体験のように思ってしまう。
目から涙があふれてくる。
これこそ筆のちからなんだな。

離婚して新たに生活を始める女性「死にたがり女」の日常が繊細に描かれています。 別れた夫へのいら立ち。「牛丼屋でビール」にはちょっとした幸せのようなものが感じられます。 新たな生活で…続きを読む

用便の話はどうにも避けられがち。 あまり想像したくないものだから、当然の話ではあります。 しかし、『それ』は体からのメッセージ。 直視しなければならない現実が見えてくるのです。 …続きを読む

本作はまさに「ハコ」のごとく、小品がびっしりと詰まっております。 そのどれもが怖い。 また、不条理だったりシュールだったりします。 140文字という規制のなかで厳選された言葉によっ…続きを読む

この物件たしかに尋常じゃない。
死者出すぎでしょ！
しかし、主人公がこの物件の利用に迷った理由とは……？
納得のオチが痛快です。
また、不動産屋と主人公の掛け合いが面白いです。

部長と新人の坂下さんのあわい恋物語が展開します。 二人の距離感が愛おしい。 会社勤めのかたは自身の新人のころを思い出したりするかもしれません。 お昼のサラリーマン飯がやけにおいし…続きを読む

この小説世界の倫理観は作者によって巧妙にズラされているようだ。 どこか正常と違う……。 そんな小さな違和感から始まり、やがて爆発する主人公の異常性に頭から足の先まで飲み込まれる。 …続きを読む

友達以上恋人未満の「くすぐったい関係」の「私」と「貴方」。 「貴方」はティーンネイジャーの男でありながら、性的に「私」を求めてこない。 そこに不満のようなものを覚える「私」。 雨…続きを読む

とんでもないホラーコメディ。 主人公の『柚葉』のキモオタっぷりはネット小説史上にのこるキモさで最高です。 そんなキモオタを襲うのは憎悪１００％の地縛霊・玲。 もし彼女がかわいく…続きを読む

切っても切れない親との縁。 良くも悪くも大きな影響を受けてしまう親という存在。 その親が独善的で支配的だったら……。 悪質なえこひいきをしてくる存在だったら……。 ひとは親との…続きを読む

人間を殺すもの……それは殺し屋とお化け。 そんなやつらが激突したらどうなるのか……？　どっちが勝つか？ 殺し屋が怪異との邂逅を果たし、そして挑んでいく姿は常人ならざる世界に生きて…続きを読む

支配関係をテーマにした作品。 「僕」の母親は「玲ママ」に支配されている。 そのことに「僕」は苦しそうで、一方玲は自由気ままだ。 そんな玲に誘われて、深夜を二人で過ごす。 その時…続きを読む

若いふたりの淡い初恋もよう――。 青春の日々――。 読者はきっと青春時代を回想してしまうに違いない。 儚い二人の恋愛を祝福してしまうに違いない。 そして最後は……ブッとばされる…続きを読む

畳み掛ける言葉の数々、宗教用語もあれば、「うっせえわ」もある、イメージの奔流。メカギガハチ公の姿を見届けよ。 まるで言葉のマシンガン。 撃たれていると気持ちよくなっていく・・・！！…続きを読む

復讐譚である。 恐ろしい拷問が待っている。 ドライバーも結束バンドも、バーナーも凶器に替わる。 そして繰り広げられる人体破壊。 目を背けたくなるのに、なぜか背けられない。 読者は…続きを読む

タイトルを見た時ハテナと思いました。 「濾過」とは一体？　どう暴力と結びついてくるのだろうと。 読んで納得。 バイアスがすべて取り除かれたピュアなものを探求するのは狂気にほかなら…続きを読む

「死者の道」シーンの主人公を誘惑してくる声がいい。 あの手この手で主人公の気を引こうとする「声」また「声」。 その周到な手口に舌を巻きます。 もし言葉のプロが声を当てたら？ 本作…続きを読む

LGBTQカップルの部屋探しが実は簡単ではないという実相が見えてくる。 結構入居拒否とかあるみたいで、本作のナオちゃんとひーちゃんも苦労します。 ようやく内見を終えて、ひと安心と思…続きを読む

ささくれの「一時にしたらずっと気になってしまう」感がよく出ています。 確かにあれは気になる。 今回僕が目にした中で、もっとも「ささくれ」の性質が出ている作品だと思います。 主人公は…続きを読む

まさにメタファーだ。 「箱」の存在は、主人公が心の奥に押し込めた、 しかし直面しなくてはいけない「トラウマ」なのだ。 トラウマと安定的になった瞬間もあったが、 それはやがて崩れる…続きを読む

ゾンビに噛まれて、もう後戻りができなくなった「瞬間」を描いているのが興味深い。 「俺」が最後にとった行動は、間違いなくヒーローそのもの。 主人公ォォォォォ！！！　と叫びながら読みた…続きを読む

剣と魔法のゲーム風バトル描写を楽しんでいると、「あれっ？　お題の消化は？」と誰もが思うはず。ご安心を。最後まで読めば衝撃のオチが待っています。僕はドラスティックなパラダイムシフトを…続きを読む

青春時代の儚い思い出と、友人を思う祈りにも似たような言葉に胸を打たれた。

ネトラレというテーマは「脳破壊」と言われるように、興奮を生むと同時に心がささくれがちなものだけれど、本作はとても優しい読み口です。読み終わったあとに優しい気持ちになれます。

一章ごとのセンテンスが短く設定されていて、そこに恐怖がぎゅうっと濃縮されています。 読み手はマウスをクリックするごとに、あるいはスマホをフリックするごとに、待ち受ける恐怖にゾクゾ…続きを読む

不死身なヨタローくんは、不死身の特性を生かして、モニターされてる系デスゲームを舞台にやりたい放題やっちゃいます。 痛快さあふれるグロシーン、想像の斜め上を行くキャラクターの行動、…続きを読む

まだ２話目まで読んだ段階ですが、大変面白いのでお勧めさせてください。 「第１夜　本日は曇天なり」でツカまれました。 情景豊かな描写に、宗教的な対話、そして予想の斜め上に着地するエ…続きを読む

デスゲームに期待される要素――知的興奮をそそるゲームの数々、問題の解決、敗者に与えられるX X X X、そして誰が優勝するのか――といったものがあますところなく含まれています。 …続きを読む

都市伝説は、まさに都市生活のなかで生まれる。都市生活での不安や恐怖を具体化したものこそ都市伝説の怪異といえる。 そんな怪異たちはイノセントでピュアな存在として世界に現れ、怪異とし…続きを読む

CIA、ダゴン教会、ルルイエ、ミスカトニック・・・そんな単語にビビッときたら一読を。邪神教の野望をめぐる一連のアドベンチャーはきっと読む人をワクワクさせる。

10行に濃縮された叙情的な感情。心の奥底に触れる言葉たちにで溢れています。

軽妙かつ厚みのある描写で、異世界でのアドベンチャーが想像力いっぱいに描かれている傑作。ストーリーを追うごとに、きっと日本のサラリーマン・南野を応援したくなるはず。

生き生きとした文体とコミカルなシチュエーションが楽しい。だけど、実はシリアスな問題を秘めた二人の問答に考えさせられます。

コメント欄で描かせていただいた内容の繰り返しになりますが、熱々のグラタンと、彼女の思い出とに、温かさと冷たさのあわいに置かれた心情になりました。ぐちゃぐちゃに泣けます。

争い合う二人の様子がコミカルで愉快でクスッとなりました。オチもシニカルなテイストが効いています。

オチにゾッとした。好奇心猫を殺すといいますが、時に人も殺すでしょう。何事も知りたがるのが人情ですが、自制を求める処世訓としても読めます。

たんたんとした語り口ながら、主人公は怒り（を通り越して怨念）で満ちみていることが伝わってくる。衝撃的な結末に打ちのめされる。ゾクゾクする恐怖をぶち込まれる一作でした。