主人公の「私」は早起きして柴犬のポピーを連れて朝早く散歩をしている。ゴールデンレトリバーを連れた人相の悪い男に嫌悪感を抱いている。妙な夢をみたある日、私は男と再会するのだが……。夢と現実があいまいになる作風を本作は採用している。その夢幻の迷宮の中に連れ込まれること間違いなし。椅子とスポンジの混同。何がリアルでなにがドリームなのか? 主人公はくるっているのか? それとも夢を見ているだけなのか? 夢と現実のあわいに置き去りにされる感覚を味わえます。
愛犬とお散歩、ふつうはたのしい日常のひとこまなのですが。ううむ。でも、こういうのってあってもおかしくないからねえ…
数年変わらない、愛犬との朝の散歩の習慣。しかし、それは「ムッツリ野郎」の登場で、不快なものに変わってゆく。冒頭は穏やかで丁寧な生活をしていた描写だったのに、この男の登場によって嫌悪感や苛立ちといった感情がみるみるうちに膨らんでいき、作品の空気は一気に不穏なものへと変わる。現実世界の感情が夢に持ち込まれ、夢の世界が現実を侵食する。負の感情に飲まれた主人公は、どちらの世界ともつかない場所に迷い込んでしまったのかもしれません。ホラーのようなラストにぞっとしました。ぜひ一度ご一読ください。
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