概要
(全体の文章量が多いのではなく、分割しすぎました)
*キャラクター紹介
<紅葉‐もみじ‐>
父に厳しく香を教え込まれた女性。
赤茶の多毛で、鳶色の目をしている。
嗅覚に優れた木葉の母親で、「木葉堂」を造る。
<葵‐あおい‐>
木葉堂のマスターをしている男性。
紅葉に一目惚れをして、一緒に「木葉堂」と造ることになった。
<木葉‐このは‐>
母・紅葉の外見を映したかのような外見の小学生。
母にも劣らぬ嗅覚の持ち主で、紅葉と葵の最愛の娘。
「木葉堂」の名前の由来になっている。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!香の匂いに誘われて、客と読者は木葉堂を訪れる。
香をテーマにした文芸作品です。
主人公の葵と香の天才、紅葉が出会って結婚し、木葉堂という香の専門店を開業するところからストーリーは始まります。
紅葉はすぐに亡くなるのですが、二人の娘、木葉ちゃんが母の血を受け継いで父を支えながら店の経営を助けていくようになります。
それぞれ人生に悩みを抱えた客が木葉堂を訪れるのですが、その人たちの悩みを葵が聞きつつ、木葉ちゃんの作ったオーダーメイドの香に触れることで迷える客は前へと歩み出していきます……
夷也さん独特の感性で綴られた文体で食い入るように拝読していたのですが、香という女性がとても好きそうなこともテーマとなっており、読みだせば止まらないそういう…続きを読む - ★★★ Excellent!!!香りで人の心を救う。香りを創る人もまた香りに生かされる。
主人公である葵は、鋭い嗅覚と香を調合する天賦の才を持った美しい女性、紅葉と出会う。二人は両家の親族から許されないまま結婚し、『きき処 木葉堂』を開店する。そこは、人々の悩みや苦しみを聞き、その心に深く働きかける香りを調合し、香りによって心の痛みを癒す、そんな店だった。しかし紅葉は妊娠中に既に病に罹っており、娘を出産した後間もなくこの世を去る。本作は、母から香りの類まれな才能を受け継いだ娘・木葉と、その父である葵が営む『木葉堂』を訪れる人々と、彼らに真摯に向き合い香りで彼らの心を癒す父娘の物語だ。
香を扱う人々の香りへの向き合い方や、それぞれの来談者の心に働きかける香材についての知識、その香…続きを読む - ★★★ Excellent!!!香りを聞き、大切なものを見る
技術の発展に伴い、人々は星空の美しさを失った。
私が子供の頃には、既にそんな風に言われていたことを思い出します。
緑は追いやられ、雨は淀み、風は濁り……大自然の本当の美しさを、私たちは一度も『きく』ことのできないまま、生きているのかもしれません。
本作の題材である香――ひいては五感を刺激するものも然り。
現代の食生活によって舌は肥え、デジタルによって磨かれた音に耳をさらす。
見るものはサイケデリックな極彩色で、材質の触感はユニバーサルに慣らされたもの。
そして、人の持つフェロモンをかき消してまで、それがあるべきものだと標準化された『清潔感』という名の香り。
とても豊かで貧しい時代に生まれて…続きを読む - ★★★ Excellent!!!香りが呼び覚ます絆の物語
嗅覚というのは五感の中で唯一、ダイレクトに脳の中枢へ伝わるそうです。
つまり、思考やフィルターを挟まない分、記憶や感情に結びつきやすい。
皆さんも、ふと道端で感じた香りに、どこかを、誰かを思い出したことがあるのではないでしょうか?
きき処『木葉堂』では、平城京、平安京の時代より親しまれ、積み重ねられてきた『お香』を通して、訪れる客の悩みや思い出に寄り添ってくれます。
過去と向き合うことは、時に辛く悲しいこともありますし、今を変えるには勇気がいります。そんな時、イケメン店長の葵さんの優しい言葉と、娘の木葉ちゃんが作る香りが、新しい明日へと導いてくれるのです。
そんな二人にも…続きを読む - ★★★ Excellent!!!『きき処 木葉堂』に貴方も行ってみたくなるはず!
『きき処 木葉堂』。
耳馴染みのない、『きき処』という名前からは想像がつかないと思いますが、この物語は、香(こう)の物語。
私は恥ずかしながら知らなかったのですが、香りを嗅ぐこと、嗜むことを『きく』と表現するそうで、だからこそ敢えてこのタイトルにしているのと思います。実にお洒落です!
香という見えないものをテーマとするのは、至難の業だったと思いますが、非常によくまとまっており、主人公の出会いから、『きき処』の立ち上げのエピソード、そして様々な悩みを抱えたお客さんの相談に至るまで、構成がしっかり整っています。
そして何と言っても、見えないはずなのに、まるで読みながらにして読者も香りを共有し…続きを読む - ★★★ Excellent!!!香りから、心を「聞いて」いく
主人公・葵は、駅のホームにて謎めいた美女に出逢う。煙草の煙に顔をしかめる彼女との縁は、香りを通じてつながり結ばれて、やがてそれは新たな香りを生み出す香の店「木葉堂」が開かれることとなる。
店にやってくるお客様に「香」を提供して、見えない心すら聞いていく――こうして作品を読んでいくと、心と香りは、目に見えない、形が無い、けれど感じるものとして親しいもののように感じました。人びとの悩みは様々で、言葉一つでは語り尽くせないほどではありますが、形のない「香」だからこそそっと心に寄り添うことができる。
作品内で紹介される「香」について非常に丁寧に説明され、「香」に触れたことがなくとも分かりやすく、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!香りをきき、人生をきく、生き方を考えさせられる清涼譚!
香道(こうどう)とは、一定の作法に従って香木(沈香など)を焚き、立ち上る香りを鑑賞する日本の伝統的な芸道…らしいです。
本作はそんな香道の店を営む父と娘のお話。
香道において、香りを「きく」という表現をすることを本作から学びました。鼻で嗅ぐのではなく、心と感性を研ぎ澄ませてじっくりと味わうのだ、と。
五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)の中で、嗅覚だけが「大脳辺縁系」という脳の深い部分に直接繋がっています。感情や記憶を司る中枢へダイレクトに直通するのです。なので、香道が目指すところがいかに人生の神髄に関わることなのかが察せられます。
店の名前は木葉堂。娘は父をちゃん付けで呼び、父は…続きを読む - ★★★ Excellent!!!この物語自体が、あなたのために練られた一炷の香り
『きき処 木葉堂』——香りを「きく」店であり、悩みを「聞く」店でもある。訪れる人々はオーダーメイドの練香に癒され、自分だけの香りとともに帰っていく。店を営む父娘と、そこに迷い込む客たちの心の物語。
読み進めるほどに、この作品自体が一つの「練香」なのだと気づかされます。
安息香の甘さがそっと心を包む。甘松がその甘さに陰影を与え、ウコンのエキゾチックな刺激が不意に弾ける。大茴香が薬膳のように身体へ沁み、藿香の清涼感が胸の奥を通り抜ける。貝甲香がすべてを繋ぎとめ、ほのかな余韻へと導く。そして白檀が——忘れていた記憶をそっと呼び覚ます。
香原料が複層的に重なって一つの香りになるように、日常の描…続きを読む - ★★★ Excellent!!!カフェで一息つくように、心落ち着く香りで極上の時間を
お香と聞くと線香やお焼香、白檀などの香木が思い浮かびやすいかもしれません。少し敷居が高そうなお香ですが、本作を読めばハードルが緩やかに下がっていきます。
喫煙室で出会った不思議な女性との縁によって、『きき処 木葉堂』を開店することになった葵。白いワイシャツに黒いエプロン姿ということもあり、カフェと間違えて来店するお客さまもしばしば。
葵の穏やかな口調に聞き入っていくうちに、お客さまも読者も身の回りにある香りへの意識が研ぎ澄まされていきます。
お客さま一人一人にあった香りをオーダーメイドで作ってくれる完全予約制の専門店。事情を抱えて来店するお客さまの視点に寄り添いながら、『きき処 木葉堂』…続きを読む