香りから、心を「聞いて」いく
- ★★★ Excellent!!!
主人公・葵は、駅のホームにて謎めいた美女に出逢う。煙草の煙に顔をしかめる彼女との縁は、香りを通じてつながり結ばれて、やがてそれは新たな香りを生み出す香の店「木葉堂」が開かれることとなる。
店にやってくるお客様に「香」を提供して、見えない心すら聞いていく――こうして作品を読んでいくと、心と香りは、目に見えない、形が無い、けれど感じるものとして親しいもののように感じました。人びとの悩みは様々で、言葉一つでは語り尽くせないほどではありますが、形のない「香」だからこそそっと心に寄り添うことができる。
作品内で紹介される「香」について非常に丁寧に説明され、「香」に触れたことがなくとも分かりやすく、非常に魅力的に、読んでいるだけでなぜか香りの雰囲気がふわっと想像できてしまいます。すると、作品内の登場人物の心に重ね合わせられるような不思議な心地を味わえました。
読んでいくうちに、すうっと香りに包まれるように心が落ち着いてしまう、不思議で魅力的な作品でした。