概要
凪の暮らす十日野町は、置屋街から発展した風俗街。川一つ挟んだ新市街区は、高級タワマンや新しい公園が整備されている。凪は学年一位の成績で、特待生となって新市街区にある進学校に通っていた。貧困と特有の認知障害のために学校から孤立していた凪。朔や友人である二宮の助けもあり、学校生活は上向いていくが、家庭では次第に追い込まれていき――
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!Web小説の海に突如投げ込まれた、超・量子的ボーイミーツガール。
この小説の各話を見ていくと、どんどん自分が未知の世界に投げ込まれて行くような気がしてくる。
圧倒的迫力と、リアリティが生み出す二人のみずみずしい関係性を見ていると、不思議と何かの問題を解いているような気持ちになってくる。
複雑に絡まっている毛糸の玉を、作者のわかりやすく、それでいて隠すところはしっかりと隠す文体がゆっくりと、ほどいていく感覚に、あなたも心動くはずだ。
物語の最後に何があるのかはわからないが、最後まで見届けたくなる魅力を、しっかりと持っている。
二人の冒険に、正解はない。
なぜならこれは、未解決問題なのだから。 - ★★★ Excellent!!!“青春”という未解決問題に揺れる二人の未来を詠む物語
観測者(=少年)と特異点(=少女)の瑞々しい触れ合い。
そこへ<量子的演算能力>という途方もない謎が融け合った壮大な野心作です。
まず物語への没入を作り出すのは、都市風景・学校生活のリアリティ。
その中で懸命に光を探す少女・凪の姿が胸を締め付けます。
一方で主人公・朔の科学的思考が全体に一本の軸を通し、物語の現在地を見失うことはありません。
そんな彼の中でピースが繋がれていき、物語の主題が提示される第一章ラストは圧巻の一言。
そこから先はまさに予測不能。
難解な概念は混じっても、読者へ寄り添うような温かみのある文体が突き放しません。
カクヨム青春SFの紛うことなき最高峰候補作。
透き…続きを読む - ★★★ Excellent!!!量子の謎と青春の痛み、格差を越え希望へ走る胸熱の成長物語決定版、必読作
量子計算の硬質な輝きと、都市の影に立つ少女の体温が同じページで鼓動する――そんな物語です。最新のTSP(巡回セールスマン問題)やアダマールゲートといった語彙が出てきても、焦点はつねに『誰が、なぜ、その選択をしたのか』。理屈は心を照らす灯りとして機能し、読者を遠ざける壁には決してなりません。
まず掴まれたのは第1話。区立図書館の自習スペースで、朔が席を外した僅か30分のあいだに、白紙の解答用紙の最下段だけに厳密解の都市順が静かに書き込まれる。残されたのは、一本の長い黒髪。量子コンピュータでも3時間を要した計算を『手書き』で再現する不可解さと、上部の余白が「途中計算を書くつもりだったのか?…続きを読む - ★★★ Excellent!!!知性に浸る傑作ボーイミーツガール
『第12話雨音ノイズキャンセリング』まで拝読し、レビューいたします。
『シュレーディンガーは未来を詠んだ』は貧困地域に暮らす孤独な天才女子高生『湊川凪』との出会いを描く、理系青春ドラマです。
本作の素晴らしい所は天才女子高生『湊川凪』が作中において“天才役”ではなく、しっかりと孤独な天才として存在し、葛藤する点にあります。
スクールカースト、貧困⋯日常に潜む
多くの問題に晒される『天才女子高生 凪』を『理系少年 朔』の視点を中心にして非常に丁寧に描いています。
少女が少年と出会うことで少しづつ変わろうとする姿は微笑ましく、愛らしい。
そして現在最新となる12話では非常に魅力的な引き…続きを読む - ★★★ Excellent!!!とあるギフテッドの美しい孤独
孤独を背負う天才少女の姿が、とてもリアルに描かれていると思いました。
ただの「美少女天才」という記号ではなく、無意識の癖や、出自による偏見、そして本人の気づかない言動が、周囲からの孤立へとつながっていく。そうした“浮いてしまう理由”が丁寧に積み重ねられているからこそ、彼女は物語の中で生きている人間に見えます。
実際、現実にも突出した知性や美貌を持つ人ほど、社会の中で誤解され、浮きやすい。だからこそ、ここに描かれたヒロイン像は決して荒唐無稽ではなく、むしろ痛切な現実を映していると感じました。
彼女の小さな一歩に、強く胸を打たれます。
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ごく個人的な体験として、仕事・学校・ゲーム…続きを読む